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祝!続々重版!!【村井理子ロングインタビュー前編】「赤川次郎を知り、椎名誠に恋をし、ブッシュを追った」、その半生とカルチャーを振り返る

天龍源一郎のファンクラブに入ってました

――本以外にも好きなことはありましたか?

格闘技はずっと観てましたね。うちはボクシングが好きな一家だったんです。けん(用高)やしき(勝男)といった日本人チャンピオンが次々出てきたんですよね。中高生の頃は、マイク・タイソンが大好きでした。あと、小学生の頃から、プロレスもすごい好きでした。長州力やスタン・ハンセン、タイガー・ジェット・シンが好きで、一番推してたのは天龍源一郎。ポーカーフェイスなところも好きで、ファンクラブにも入ってました。

――筋金入りですね。

村井 だから格闘技好きは今に始まったことじゃないんです(笑)。大学に入って京都でひとり暮らししてるときに、とんねるずが格闘家を闘わせる番組があって好きだったなぁ(『ラスタとんねるず’94』の「ジャイアント将棋」)。竹原(慎二)の「ガチンコファイトクラブ」もハマりましたし。WOWOWで今もやってるボクシング番組『エキサイトマッチ』も観てました。

――総合格闘技はどうでしたか。

実はそんなに観てなくて。ところが今、朝倉くる選手が出てきて、息子たちのアイドルなんですよ。豊橋から仲間と出てきた「路上の伝説」が、みんなで楽しくYouTubeやって、焼き肉食べるみたいな動画を、息子たちはうっとりしながら観てる。ケンカと仲間とYouTubeだから、子どもの好きなものてんこ盛りなんですよね(笑)。で、私も観てみたらハマっちゃって。こないだの「朝倉未来vsフロイド・メイウェザー」は楽しかったですよ。

――村井さんが格闘技に惹きつけられるのはなぜなのでしょうか。

子どもの頃、心臓の手術をしたこともあって、あんまり無理をしないように過ごしてきたんです。だからこそ、肉体を極限まで鍛え上げる人たちのストイックさに憧れる。竹原チャンネルもよく観てるんですけど、日本人で最も重い階級で世界チャンピオンになったレジェンドが、病気を克服して若者にものを教えるような人間としての丸さが出てきて、その変化にいちいち感心するし、勇気をもらいますね。

母に抱き着く村井さんのスカートは好きなチェック柄。
母に抱き着く村井さんのスカートは好きなチェック柄。
レストランで嬉しそうな兄と母。
レストランで嬉しそうな兄と母。

――村井さんが書くようになったのはいつ頃からですか?

小学校のときから文章を書くのは好きでした。でも、地元にあった小学生向けの文芸誌『わかしだ』に投稿し続けても、一度も掲載されなかったり、読書感想文も全然賞が取れなかったりして、自分の文才に自信はなかったです。

――物語を書くことはありましたか。

それはなかったですね。『宝島』のちょっと変わった文章が好きで、それをマネてました。いわゆる、サブカルですよね。戸川純とか中島らもとか。エッセイ風のものをマネして。

――それは読書感想文ウケしなさそう……(笑)。

そうですね。昭和軽薄体にもハマって。椎名誠さんに完全に恋をしていたんですよ。すっごいたくさん読んでました。私、母、おばあちゃんで回し読みして、3人でゾッコンでした。『岳物語』でご家族のことを書かれて、なんとなく、ああそうか、お父さんなのかって思いました。

――恋してたから。

そうそう。この前実家に帰ったら、おばあちゃんのタンスに椎名誠の初版がずらっと残ってて懐かしかったですよ。『本の雑誌』まわりの人たちは憧れでした。椎名誠、目黒考二、沢野ひとし、木村晋介。私、『兄の終い』の書評を目黒さんに書いていただいたのが、とてもうれしかったです。

――村井さん自身の書く話に戻すと、評価されなくても書き続けたんですね。

でも、中学のとき、国語のサイトウ先生に褒められて、すごく自信がついたことは覚えてます。一番恐れられてる先生だったんですけど、その人のテストでものすごくいい点数を取ったんです。そしたら先生に「おまえ、何を読んでるんだ」と聞かれたことがあって。氷室冴子さんや田辺聖子さんの名前を挙げたと思うんですけど、「おまえ、向田は読んでないのか」と言って『父の詫び状』を貸してくれました。「おまえ、ちゃんと読めよ。読み続けろよ」と言ってくれて、励みになりましたね。

――いい出会いですね。

それでますます文章を書くモチベーションが上がりました。うちの学校は担任との交換日記があったんだけど、割り当てられた分量では足りなくて、毎日自分で紙を付け足して書いてました。担任にも「おまえ、書く仕事をやったらどうだ」と言われるほど、熱心にやってましたね。でもそのときは作家や翻訳家になりたいとはまったく思ってなかった。ただ、書くことが好きで、反応をもらえたのが嬉しいだけでした。

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新刊紹介

村井理子

1970年、静岡県生まれ。翻訳家、エッセイスト。主な著書に『兄の終い』『全員悪人』『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術』『ハリー、大きな幸せ』『家族』『はやく一人になりたい!』『村井さんちの生活』 『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』『ブッシュ妄言録』『更年期障害だと思ってたら重病だった話』『本を読んだら散歩に行こう』『ふたご母戦記』『ある翻訳家の取り憑かれた日常』『義父母の介護』『エヴリシング・ワークス・アウト 訳して、書いて、楽しんで』など。主な訳書に『「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『黄金州の殺人鬼』『メイドの手帖』『エデュケーション』『捕食者 全米を震撼させた、待ち伏せする連続殺人鬼』『消えた冒険家』『ラストコールの殺人鬼』『射精責任』など。

무라이 리코
1970년, 시즈오카현 출생. 번역가, 에세이스트. 주요 저서로 『오빠가 죽었다』 『낯선 여자가 매일 집에 온다』 『필요 없지만 고마워: 항상 무언가에 쫓기고, 누군가를 위해 지쳐있는 우리를 구원하는 기술』 『하리, 커다란 행복』 『가족』 『빨리 혼자가 되고 싶어!』 『무라이 씨 집의 생활』 『무라이 씨 집의 꽉꽉 채운 오븐구이』 『부시 망언록』 『갱년기 장애인 줄 알았는데 중병이었던 이야기』 『책 읽고 나서 산책 가자』 『쌍둥이 엄마 분투기』 『어느 번역가의 홀린 듯한 일상』 『시부모 간병』 등이 있다. 주요 번역서로는 『요리가 자연스러워지는 쿠킹 클래스』 『어둠 속으로 사라진 골든 스테이트 킬러』 『메이드의 수첩』 『배움의 발견』 『포식자: 전 미국을 경악하게 한, 잠복하는 연쇄 살인마』 『사라진 모험가』 『라스트 콜의 살인마』 『사정 책임』 등이 있다.

X:@Riko_Murai
ブログ:https://rikomurai.com/

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