2023.5.27
女性用風俗店のセラピストに最も必要な能力とは? 【対談】菅野久美子×槙島蒼司
会話から人物像を積み上げていく
菅野 具体的に、お客さんから彼氏とか旦那さんの愚痴を聞くことも多いと思うんですけど、どんなことを言われることが多いですか。
槙島 リードしてあげるっていうことができない人が増えたっていうのはよく言われます。例えばデート利用のお客様だと、どこか行きたいんだけど、提案してって言われることもあるんですよ。3日間一緒にいるから、デートプランを考えてとか。そういう役回りも多いので、じゃあ、ここへ行こう、時間をこれくらいで区切って、次はここへ移動しようとか、こちらからプランを提案してあげるってことが求められるんです。今そういうことやってくれる男の子ってあまりいないらしいんですよ。
菅野 それもすごくわかります。女の子がリードする。デートプラン、ここに行って、その後はこの店で食事してっていうのを決めるってことですよね。私も長女気質だからなのか、しっかりしなきゃ、という思いが強くて、全部自分でデートプランを決めることが多かったんですよ。だけど、本当はそんな自分からも解放されて、全てお任せでレールに乗りたいという願望もあるんです。
以前、ある女風オーナーがおっしゃっていたのは、やっぱりデートなりなんなり、提案力のあるセラピストさんは、人気だと。この人は、どんな世界を見せてくれるんだろう、というワクワク感もありますし。
槙島 こちらは、お客様と会話してる中で、趣味、好きなものとか、あとは好きな食べ物でもいいですけど、そういったものを常に確認しながら、自分でその人の情報として蓄積する。それを踏まえて会話をするのが基本なので。そういうことをする男性はあまりいないんですかね。
菅野 もちろん一般的な男女のお付き合いの場合、女風と違って、お互いの歩み寄りや話し合いも大切です。だから、確実に男女、どちらかが問題があるとは言いきれないとも思う。
その上で、槙島さんがおっしゃった情報の蓄積というのが、キーワードになってくる。それって、そもそも相手への関心がないと難しいと思うんです。取材をしていると、男性側にそこが不足していて、そんな不満が積み重なって、女風の利用に繋がる女性が多かった気がします。いや、関心はあるのですが、そもそもベクトルが違うというか、浅いというか。
槙島 僕は一般の方としゃべってると結構ギャップがあって、ぎょっとすることがあります。デリカシーがない。ここまで聞いたら嫌がるだろうとか、それを聞いちゃったら失礼だろうっていう、いわゆる自分たちの仕事の中で持っている「はかり」みたいなものがあるんですけど、それが一般の方とは異なっているんでしょうね。
言葉だけじゃなくて、例えば道路を歩いてるときも、危なかったらすぐ手を差し出せるようにとか、並んでいても女性を優先、お子さんがいればお子さんを優先するっていうのは、当たり前の習慣になっているので。逆に言えば、それが意識しないとできないようでは、この仕事は辛いですね。
菅野 私とデートしてくれたセラピストさんは、まさにそんな気遣いができる方でした。一挙一動に、感動しましたもん。「神は細部に宿る」というか、そういう気遣いが光るからこそ、稀少価値があるんでしょうね。
デートでも、普段のデートで、女性がついつい先導しちゃう感じはわかります。話していて、あ、その先を考えてないんだなって思ったら、先回りしちゃう。プランがないってことをカバーしてあげちゃうんですよね。でもそればかりだと、正直疲れる。だから、何から何までお任せでデートするって、それだけでお姫様感があるというか、非日常というか。
槙島 そこまで難しい話じゃなくて、まずはとにかく、決めてあげる。性的なサービスの話でもそうで、例えば初めて行く場所でも、必ずどこのラブホテルに入るか決めておく。この時間のコースなら、時間がもったいないから駅に近いほうがいいとか、ある程度落ち着いた年齢の方だと、若い人達が多いエリアから外れたほうがいいだろうとか。そういうのをちゃんとリサーチして、選んでおいてあげる。恥ずかしいと思わせちゃいけない。そもそも、初めてのお客様は、恥ずかしいと思って来てることが多いですから。この辺りを歩いていればあるだろう、じゃダメなんです。