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女性用風俗店のセラピストに最も必要な能力とは? 【対談】菅野久美子×槙島蒼司 

「決めてほしい」女性と、「決断したくない」男性

菅野 女性が青春を求めるということについてもう少し深くお伺いしたいのですが、世代を問わないんですかね。今は若い女性のお客さんも増えていると思うんですが。

槙島 一番にメンタル的な部分を求めているというのは変わらないですけど、若い女性の場合は圧倒的に話し相手としての需要ですね。若い女性は、そもそも出会いはあるし、遊びに行けばいいわけじゃないですか。じゃあなんで女風を利用するかっていうと、自分がどうなりたいのか、心身ともに本当の自分を知りたいっていう子が多い。
僕らっていわゆる夜職の方、ホストとかキャバクラをやられてる方よりも、一歩踏み込んだ状態でお客様と接することのほうが圧倒的に多いので、そういう本音の部分を話したいってことなんでしょうね。

菅野 彼氏との性的な悩みとか。

槙島 それもありますし、そもそも、いわゆる草食系男子っていうか。さっき、若い子は出会いもあると言いましたけど、出会えるは出会えるらしいんですけど、その先に一向に進まないらしいんです。

菅野 先に進まない問題! これは本当によく聞きますよね。彼氏の方から何もないっていう。

槙島 僕もわかるんですけど、男ってどうしても決めたくない生き物というか、決断を迫られたときに結構、曖昧に濁すというか。核心を突かない、正解を言ってくれない人が増えてきたので、その中でちゃんと答えを出してあげる役割。そういうものを求められている気がします。

菅野 それって同世代同士では埋められないんですかね。若い男性は、何が足りないと思われているんだろう。

槙島 たぶん、女性側が相手に求めているルックスと、精神性が伴った人がいないっていうのが、僕の考えなんですよね。例えば、こういう言葉をかけてほしいけど、好きな人は無言とか、いわゆる奥手だから、何もしてくれないとか。

菅野 なるほど。それは取材においても、若い女性に特に出てくる悩みでしたね。話し合いが持てればいいんですが、こと性的なことにおいては、特に相手のプライドを傷つけたくないという優しさがあったりもする。結局、お手上げ状態で、男性に何も言えない。この感覚は、私の世代と変わらない気がします。ただ今の時代だと、そんな女性のことをわかってくれる女風があるから、女風に行こう、となる。

槙島 僕のお店も20代のセラピストが多いんですけど、ある程度経験値を積んできた子たちを受け入れてきたんで、しゃべっていても芯があるんですよ。ずっとやってきて自分のプライドがあったり引き出しがあるんですけど、まれに若い子が面接に来たときに思うのは、やっぱり実績というか、積み重ねてきた経験とか見てきたものにもよるんでしょうけど、ちょっと薄いのかなとは思いました、話の内容が。

槙島さんがセラピストを始めた頃と比べると、20代の利用者が増えるなど客層の変化を実感するという。
槙島さんがセラピストを始めた頃と比べると、20代の利用者が増えるなど客層の変化を実感するという。
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新刊紹介

菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

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