よみタイ

ラフィンノーズ・チャーミーの死生観。「『好きなことやって、俺、楽しかったから、オールOK』で死んでいきたい」【佐藤誠二朗『いつも心にパンクを。』試し読み 第一章その2】

男性ファッション誌「smart」元編集長・佐藤誠二朗さんの新刊『いつも心にパンクを。Don't trust under 50』が8月26日(火)に発売になりました。
今回は書籍の試し読み企画として、「第一章 還暦超えてもインディーズ」の一部を抜粋、全3回に分けてお送りします。
2回目は、著者が高校時代から憧れ続けたラフィンノーズのチャーミーのストーリーです。(文中敬称略。一部、ウェブ用に表記など調整しています)(文中敬称略。一部、ウェブ用に表記など調整しています)

(全3回の2回目 #1 #2 #3

チャーミーが62歳の誕生日に語ってくれたこと

2023年6月17日、毎年恒例の全国ツアーの一環として、東京・渋谷クラブクアトロでラフィンノーズのライブが開催された。いつものオープニングSE(代表曲『パラダイス』のオーケストラバージョン)が流れはじめると、僕は一気に若返る。ラフィンに夢中になり、コピーバンドまでやっていた高校時代と変わらぬ気持ちが昂まるなかSEは終わり、一曲目のイントロに乗って僕のパンクヒーロー、チャーミーがステージに現れた。

ラフィンノーズのライブを初めて観た日のことは、今でも鮮明に覚えている。メジャーデビューから1年が経過した1986年10月26日。東京・日比谷野外音楽堂で高校2年の僕が初めて目の当たりにしたラフィンノーズは最高にかっこよく、とりわけボーカルのチャーミーは「これからはこの人についていこう」と思わせるほどに輝いていた。

あれから月日は流れ、僕は50代になった。音楽の趣味は広がったが、ラフィンノーズへの思いは変わらない。コロナ禍がやわらぎ、ライブに足を運びやすくなった2023年は、5月の横浜公演やこの日の渋谷クラブクアトロなど、何度もライブに参戦した。

どのライブでも、チャーミーはいつもパワフルだ。

〝あのころ〟、1980年代のチャーミーはまだ20代前半の若者だった。そして約40年を経た今も、約2時間を全身全霊で歌い、ステージ狭しと動き回るその姿は颯爽としている。きっと何かしらの節制や鍛錬があるのだろう。2023年6月21日、奇しくもチャーミー62歳の誕生日当日におこなったインタビューでは、まずそんな話になった。

「以前よりすごく気をつけているのが〝食〟です。具体的にですか? コンビニフードは食わない。1日3食ではなく1.5食ぐらいにして、がっつり食うのは1食だけ。あとはグルテンフリーや玄米食ですね。

肉は好きだからビーガンではないけど、放牧されて育ったグラスフェッドビーフを選ぶようにしています。ホルモン剤でバッチバチの肉なんて、もう食べられない。コンビニのおにぎりやお弁当も、裏面を見ると添加物だらけ、毒物まみれですよ。そういうことを意識しはじめたら、明らかに体の調子がいい。体重もすっと落ちて、俺、今は20代よりスリムです。あれ、なんの話してんだろう。今日はこういう話でいいの(笑)?」

今のチャーミーを知るうえではとても興味深い話だったので、ぜひ続けてもらうことにした。かつては浴びるように飲んでいた酒も、ずいぶん前にきっぱりやめたという。

「酒は完全に行くところまで行って、ドクターストップがかかった。東日本大震災の前だったかな。『あんた、これ以上飲んだらもう死にます』って医者からはっきり言われたんです。やめてからしばらくは、離脱症状の振戦せん妄というのが出て、大変でしたよ。本当なら入院しないといけない状態だったんですけど、自力でやめられました」

その強い意志に驚く。盟友であるベーシストのポンは今でも酒好きだが、隣でガンガン飲まれても気にならないのだろうか。

「気にならないし、ポンにはむしろ飲んでもらわないと(笑)。人それぞれの人生、生きざまだから。でも、食について俺が何か話すと、一番食いついてくるのはポンなんです。俺はちょっと前まで、アスリートのように、ライブの2時間前に必ずパスタを食べてたけど、今はそれもやめてファスティングです。ライブ前日から20時間ぐらいはプチ断食で、腹にほとんど何も入れません。そういうことをポンに話すと、『マジか⁉ 俺もその域に行きたいわ!』って食いついてくる。ポンはマインドが昔から本当にオープンなんです」

40年以上のつき合いになるチャーミーとポン。その絆の深さは外からは計り知れない。

「ポンと向いている方向が一緒であることは間違いないかな。お互いに同じことがしたくて、同じような方向に進んでいる。俺らふたりは、絶対一緒にいなければいけないっていう意識が、今さらながらちょっと芽生えてますね。だから、『おまえ、長生きしてくれよ』って。向こうは絶対、俺のほうが先に死ぬと思ってるだろうけどね(笑)。
この前もポンに、『ちょっとジャンクフード食べ過ぎだぞ』って言ったら、『ほんまやな。俺もジャンクフードやめようかな』って言ってましたけどね」

ラフィンノーズの2023年6月の東京・渋谷クラブクアトロのライブ。書籍の表紙となっている。
ラフィンノーズの2023年6月の東京・渋谷クラブクアトロのライブ。書籍の表紙となっている。
1 2

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Facebookアカウント
  • よみタイX公式アカウント
佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『オフィシャル・サブカル・ハンドブック』『日本懐かしスニーカー大全』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

ツイッター@satoseijiro

週間ランキング 今読まれているホットな記事