2020.11.22
夫婦問題カウンセラーは見た! リアル『妻が口をきいてくれません』夫婦が抱える失望と葛藤
2020年1月15日の第1話配信以降、回を追うごとに反響を呼ぶ超話題作となった「妻口」ですが、16話(2020年8月23日配信回)をもって「よみタイ」での連載は終了しました。
書き下ろしを加えた単行本が11月26日に発売されます!
夫婦問題カウンセラーとしてこれまで約8000人の悩みに耳を傾けてきた高草木陽光さんによると、実際に「夫との会話を諦めた妻」「妻からの拒絶に戸惑う夫」という夫婦は多く、そのまま離婚に発展するケースも少なくないといいます。
今回は高草木さんに、そんな「妻が口をきいてくれない」夫婦の実例をあげて、その背景にある問題や対策について語っていただきました。
(文・構成/よみタイ編集部)
失望からの夫婦関係改善は難しい
口をきいてくれない妻には、大きく分けて2つのパターンがあります。
一つは、夫に対して怒っているケース。もう一つは失望しているケースです。
例えば家事をしてくれないとかキャバクラ通いが許せないとか、ある事柄について怒っている場合は、原因がはっきりしているので、まだ対策のとりようがあります。
しかし、妻が夫に対して失望して会話を拒否してしまっている場合、その背景にはこれまでの色々なことの積み重ねがあり、関係改善は容易ではありません。
「1日でも早く離婚したい」と、私のところに相談にきた木村ミユキさん(仮名・30代後半)も“失望パターン”で、振り返るともう半年以上、夫婦の会話はないということでした。
ミユキさんと夫のマサシさん(仮名・40代前半)は、勤め先は違うものの、大手メーカーに勤務する共働き夫婦。4歳の男の子のお子さんが一人います。
「夫とは将来が考えられません。でも夫は離婚に同意してくれないし、母にも『子供がいるんだから』と反対されています。どうしたら説得して離婚できるでしょうか」
夫のマサシさんには、暴力や不倫など“1発アウトな前科”はなし。収入は同世代の中では高収入の部類で、家事も「どちらかというとマメに動くタイプ」だと言います。だからこそ当人同士や家族間では離婚の話し合いが進まず、調停を申し立てても長引くことが予測できるので、限界を感じたミユキさんは私のところに相談にきたということでした。
どうしてミユキさんはそんなに離婚したいのか、具体的に話を聞き始めたところ、出るわ出るわ、夫への不満の数々。
子供が生まれたばかりの頃、慣れない育児で心身ともにいっぱいいっぱいな時に、夫は大学時代の友人や同僚との飲み会を優先して出かけて行った。
夫の希望でホームパーティーを開いたのに、皆の前で「コイツ気が利かないタイプでさぁ」とけなされた。
旅行を計画しているとき、行き先を提案しても「そこの何が面白いの?」など否定的な物言いをするばかりで代替案は提示してくれなかった。
……などなど。
ミユキさんは、その都度「赤ちゃんと朝から晩まで二人きりは不安」「否定ばかりされるのは気分が悪い」など、マサシさんに気持ちを伝えていたと言います。
「でも、夫から返ってくるのは仕事の愚痴だけ。口をひらけば『俺がどれだけ大変か』というアピールが続くばかりで、謝罪や改善案が出てくることはありませんでした。もう何を言っても無駄だと思うようになって、事務連絡以外で夫に話しかけることはなくなっていきました」
ミユキさんにとってショックだったのが、切り札である離婚を申し出ても、自分に対する夫の態度が変わらなかったことでした。
「私としては数ヶ月ぶりに夫に向き合い、意を決して離婚を切り出したつもりでした。でも夫は『いや〜そんな……』とか『今は仕事が忙しいし、子供のこともあるだろう』とか、答えになっていないことをゴニョゴニョと言うだけ。翌日からも平然と変わらない生活を続けていました。ここまでしても自分と向かい合ってくれない人と、一緒にいる意味なんてありませんよね」
離婚を切り出して3か月。一向に態度や言動が変わらない夫に見切りをつけたミユキさんは、息子さんを連れて実家へ帰ってしまいました。