2020.8.8
元めちゃモテ女〜ぷっくり唇がここに来て大火傷を負ってる話
さて、めちゃモテ全盛期から10年以上が経過、北朝鮮のもたらす国際関係の緊張は具体的に広がり、各国で極右の存在感が増し、日本でも野党が解体を繰り返して苦戦し、めちゃモテぷっくり唇だけではどうやらやっていけなくなった2019年、女子たちのファッションはベーシック化し、ふわふわ揺れる白レースのスカートにミントグリーンのツインニットなんてあんまり見なくなった。
万人からちょっとずつ愛されてもそれほどいいことはない、と気づいたかつてのぷっくり唇たちも、ティントバームで効率よく血色の良い唇を作り、子育てをしながら仕事に戻ったり、旦那の赴任先から戻って子供の中学受験準備をしたりしている。が、もちろんめちゃモテの究極系というのは一人にがっつり愛されることではなかったので、愚直にCanCam道を走った結果、多くの人に可愛がられはしたが、一人に選ばれることなく東京砂漠を現役で彷徨う女だっている。ラディカルめちゃモテニスト。今でも女子アナと服がカブりがちで、誰に紹介しても好感触だが誰にもがっつりはハマらない。
先月、そんなかつてのCanCam系モテ女子、今となってはエビちゃんよりエビちゃん系の同い年の友人(仮名エビ子)と、数歳上の男の家のホームパーティーに出かけた。男は全員独身で、みんなやや自分大好きでやや散財癖があり女好きで仕事好き。学歴収入職業などの条件は悪くない。タワーマンションは麻布十番、鍋は生姜と白だし。それこそCanCam全盛期だった10年ちょい前によくあったようなシチュエーションで、最近めっきり減ったけど、年に一回湧き起こる私の善意とやる気で開催された。私とエビ子以外に、私の一コ下と一コ上の知人がいたのだけど、多少の盛り上がりを見せるのは一コ下の元オリーブ少女周辺だけで、一コ上もエビ子もいまいち盛り上がらない。
周囲が盛り上がらないので本人も盛り上がらない。というかエビ子に至っては露骨にテンションが低い。感じ悪いに限りなく近いくらいノリが悪い。元オリーブ少女は私なんかが知らないバンドのライブに行く約束があると言って少し早めに帰り、一コ上はタクシーで直帰したので、私はエビ子と二人でミッドタウンの方まで歩きつつコーヒーを飲むことにした。
9条的な性格のエビ子は争いを好まないし、基本的にいつも無害な笑顔でやり過ごすのだが、マンションを出てコーヒーを買って100メートルほど坂を登ったあたりで、本日の男たちについて多角的な批判を繰り広げ出した。「自分の趣味が一番で結婚には向かなそう」とか「ワインがなくなってもつがない」とか「今時喫煙者がいた」とか「一番若い子にだけ興味を示した」とか「40手前でも20代の子とそのうちさらっと結婚しようと思っていそう」とか。
彼女の批判が根拠のないものでないのは確かだが、10年前にも私たちはまったくもって似た属性の男たちと日々飲んでいたのもまた事実。そして当然めちゃモテパステルカラーだったエビ子はトイレに行くたびに男がついていくほどいい扱いを受けていたし、本人のテンションも高かったし、軽やかなニットで飲み会から飲み会、デートからデート、男から男をホップスキップジャンプと渡り歩いて、「旅行行った時あんまり英語できない人やだぁ」とか「アクセサリーつけてる人は嫌かもぉ」とか「田舎の男子校出身の男の子って性欲強そうでこわぁい」とか言いつつ、英語下手な男にもアクセサリー男にも田舎出身者にもそんなに嫌われずにイケメンと別れたり金持ちと別れたりしていた。