2021.7.1
不倫バッシング、夫の名前の表札…「日本の家族観」が生む苦しみ。南和行さん×三輪記子さん弁護士対談
この刊行を記念して、著者で弁護士の南さんと、同じく弁護士で『これだけは知っておきたい男女トラブル解消法』(海竜社)の著者である三輪記子さんとの“弁護士対談”が実現。
対談前編では、お互いの著書の感想から始まり、弁護士としての自己表現方法や、男女の性トラブルに対する意識の差など、盛りだくさんのトークをお届けしました。
後編は、昨今何かと話題になる有名人の不倫問題について、法律家のお二人が問題提起をするところからスタートします。
(イラスト/上田惣子、構成/「よみタイ」編集部)
他人のセックスをバッシングする異常さ
(前編から続く)
三輪記子さん(以下、三輪) 先ほど南先生もお話されていましたけど、今みたいに不倫をめちゃくちゃ叩くような世の中って健全ではないと思うんですよ。というのは、他人の性的な話を、普通は触れられたくないことを、社会的にバッシングするってやっぱり異常だと思うんです。不倫には厳しいのに、例えば社会という意味では、差別にゆるかったりとか、矛盾がすごくあるな、と。
だから、結婚しても性的な関係を維持するために必要なことは何かということが問われなければならないと思うんです。それは旧来の家族観を、このまま私たちが共有し続けてもいいのかどうかということでもあるんじゃないかなってすごく思っていて。不倫は旧来の家族観から外れるからこそ魅力もあるし批判もされる部分もあると思うので……。
三輪 南先生の本の全編を通して、読者が「そうやんな」って共感するのは、例えば親の介護は子供の役目とか、家の表札が夫の名前とか、みんなが共有している日本の家族観というところで生まれる苦しみだったり、女性が経済的に自立するのが難しいということが背景にあったりする。この本を読む方にはそういう問題点にも気づいてほしいなと思いました。
南和行さん(以下、南) ありがとうございます。
不倫バッシングというのは本当におかしいですよね。「妻がいる既婚者の俳優の誰それさんが若いアイドルの女の子と夜中コンビニで何かちょっと買物した後、マンションに消えていって、次の翌朝8時に出てきました」とか。要するにそれって、この日にこのマンションでセックスしていました、って言っているわけじゃないですか。
あと、同性愛かもしれないという有名人に対して「ゲイ疑惑」と、まるで悪いことのような書き方をして、そのうえで男同士のセックスをからかうような表現をするゴシップ記事も、少なくなったとはいえまだまだあると思うし。
でも夫婦が仲良く手を繋いで自宅に帰る写真を撮って「この後、夫婦で朝までセックスしたんでしょうね」なんてゴシップ書かれないわけで。
なんで結婚している関係じゃない二人のセックスは、そこまで好き放題大騒ぎして、からかってええと思ってるのんって。セックスはどんなセックスでも話題にしませんというのではなく、「話題にしていいセックス・話題にしないセックス」みたいなのがあって。
三輪 他人が「あの人のセックスについては語っていい」みたいになっているのがちょっと気持ち悪いですよね。
例えば、男性アイドル同士や女性アイドル同士が付き合っていてもおかしくないと思うんですよ。その子がゲイかもしれないし、レズビアンかもしれない、バイセクシュアルかもしれない。そんなもの外見からは全く分からないことじゃないですか。でも、女性同士で一泊旅行に行っても別に問題にならないのに、男性同士だったら好奇の目に晒されたり。
他人に対して、性的にこういう人間であってほしいというイメージを私たちが持ち過ぎなんだと思うんです。まずは、自分が性的にどういう人間かということを自分自身が把握することが先ちゃうかと。
弁護士も聖人君子って思われがちな職業ですけど、そんな面ばかりじゃないですからね。一人の人間の中にいろんな部分があって当然。人間ってそういうもんやろって思っています。