2021.3.18
春のセンバツ開幕記念! 甲子園が消えた夏、仙台育英・前キャプテンを奮い立たせた母とのLINE
いよいよ明日3月19日から、「第93回選抜高等学校野球大会」が開催されます。
昨年の甲子園大会は、新型コロナウイルスの影響で、史上初の春夏連続中止に。
代わりにセンバツに出場予定だった32校が1試合限定で行う「2020年甲子園高校野球交流試合」が開催されました。
昨年、朝日放送テレビは「2020高校野球 僕らの夏」と題して、異例づくしの夏を過ごす球児たちを取材。
大会や試合どころか、部活動自体も自粛せざるを得ない緊急事態が続く中、
野球ひと筋に走り続けてきた球児たちは何を思い、いかにしてその苦しい日々を乗り越えたのか……?
『僕らの夏』制作スタッフが番組の取材を通して見えてきた各校のドキュメントを『消えた甲子園 2020高校野球 僕らの夏』という一冊にまとめました。
今回はその書籍の中から、センバツ初日の第2試合で、明徳義塾高校(高知)との対戦を控える仙台育英高校(宮城)のエピソードをお届けします。
昨年、甲子園に出場する夢がかなわなかった先輩たちの想いをぜひ知ってください。
※書籍から一部抜粋・再編集しています。学年や役職は2020年の取材当時のものです。
(構成/よみタイ編集部)
仙台育英・田中を支えた母の涙
甲子園で春夏3度の準優勝を誇る東北の強豪・仙台育英(宮城)のキャプテンは兵庫県加古川市出身だ。セカンドを守る田中祥都は甲子園に出るために、ひとりで宮城までやってきた。
2019年秋の県大会以降の公式戦12試合のうち、7試合で逆転勝ちして東北王者になった仙台育英。田中は打率5割という打撃でチームを牽引していった。
『僕らの夏』制作スタッフの小松幸一は言う。
「田中くんが6人兄弟の上から5番目というのは知っていて、兵庫県加古川市にある実家に取材でうかがいました。お兄ちゃんの奥さんや子どもなど10人以上いて、とてもにぎやかでした。お母さんに話を聞こうと思っても、赤ちゃんは泣くし、犬は吠えるしで大変でした(笑)」
親元を離れて暮らす息子に対して、母親には心配しかない。
「入学してからずっと、連絡しなかった日がないそうです。でも、思春期の高校生なので『おつかれさん』と送っても『おす』とかしか返ってこなかったりするそうで」
男兄弟で揉まれたせいか、祥都は幼いころから手のかからない子どもだった。
「上のお兄ちゃんたちの名前は野球と関係ないが、祥都くんが生まれたときは『野球っぽい名前にしたい』と思ったらしく、〝しょうと〞という名前になりました。幼いころからしっかりした子で、近所のお兄ちゃんが甲子園に行ったのを見て『お母ちゃんも甲子園に行けるよ。祥都が連れてってあげる』と言って野球を始めたみたいです」
十数年後、その宣言が現実のものになると、母親は想像しただろうか?
「お兄さんたちも野球をしていたのですが、甲子園に行くことはできず。弟は卓球部なので、お母さんにとってはラストチャンスです」
ここで、母親のインタビューを再現しよう。