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マイナス30℃にもなるアラスカ560キロのレースに挑戦! 「困難に立ち向かう姿を見せることがアスリートの価値」という北田雄夫さん

「致命傷をいかに防ぐか」が最重要

――アラスカ対策としてどのような事前トレーニングを?

前回参加した時に、マイナス30〜40℃にもなるのに、凍ってない川があったんです。だからそこにハマることを想定したトレーニングを行いました。
具体的には、マイナス20℃の大きな冷凍庫を借りて、下半身ずぶ濡れの状態で冷凍庫に入り5分間待機。おそらくハマっても5分くらいで脱出できるだろうと。その後、予備の服に着替えるという訓練です。

もし極寒のアラスカで川にハマったら…。そのシーンを想定してー20℃の冷凍庫実験。(写真提供/北田雄夫)
もし極寒のアラスカで川にハマったら…。そのシーンを想定してー20℃の冷凍庫実験。(写真提供/北田雄夫)

――トレーニングからかなり過酷ですね。

そもそも生き延びられるのか、自分の足はもつのか、確認しておく必要があるので。他のスポーツはいかにパフォーマンスを上げられるかを重視すると思うのですが、アドベンチャーマラソンの場合「致命傷をいかに防ぐか」ということが最重要。早くゴールすることも大切ですが、それよりも、いかにトラブルを避け、致命傷を抑えるかに重きを置いています。その方が止まることなく進めるので、結果的にタイムも良くなりますし。

22時間ソリを引く、雪山合宿の様子。(写真提供/北田雄夫)
22時間ソリを引く、雪山合宿の様子。(写真提供/北田雄夫)

あとは、今年の1月中旬に長野県の菅平高原で、22時間ソリを引くトレーニングも実施しました。自分の持久力を知って鍛えることが目的です。
例えば、汗で足の皮膚がふやけてマメができるとか、食欲が落ちていつもは食べられるものも全く受けつけなくなるとか、5時間や10時間のトレーニングではわからないことがある。だから20時間以上実際にやってみることに意味があるんです。

――装備や費用についても教えてください。

今回も食料だけで数万単位の費用をかけて準備しています。僕の場合、「ボーロ」とか「ぱりんこ」とか、食感が軽いサクッと系の方が、胃が受けつけて食べやすいということがだんだんわかってきたので、そういうものを多めに入れています。

前回のアラスカレース時の装備の数々。(写真提供/北田雄夫)
前回のアラスカレース時の装備の数々。(写真提供/北田雄夫)

あとはレース用の特殊なソリを約5万円で購入しました。日本では見かけないのですが、世の中にはレース用のソリというのがあって、これに荷物を乗せて引きながら走ります。アラスカレースは極寒用の防寒具とか寝袋とか、一つ一つの荷物が大きいので、ソリで引くのが効率的なんです。

他の費用は、参加費が16万円、飛行機代往復20万円、1週間前からの前入り分含む宿泊代が20万くらいで、トータル約70〜80万円くらいですね。

――最後に、レースに向けた楽しみや意気込みをお願いします。

楽しみは、オーロラを見ることです。残念ながら前回は天候の都合で見れなかったので、今度こそ。
アラスカレースは一度経験したことがあるだけに、またあの過酷な状況に10日間も向き合うことになるのかと、不安もあります。メンタル面が特に。
でも、これまでもそうだったように、その不安を乗り越えてこそ出会える景色が待っているので。とにかく無事完走できるように頑張ります!

2月20日、羽田空港より現地に出発した北田さん。当然荷物も多いです。挑戦の結果はまたご報告します。(写真提供/北田雄夫)
2月20日、羽田空港より現地に出発した北田さん。当然荷物も多いです。挑戦の結果はまたご報告します。(写真提供/北田雄夫)

過酷すぎる挑戦と挫折、そして成長の記録!

「賞金なし!」「すべて自己責任!」「舞台は、砂漠、荒野、山岳、氷雪、ジャングル!」……そんな世界でもっとも過酷なレース「アドベンチャーマラソン」。日本唯一のプロアドベンチャーランナーとして『情熱大陸』などでも特集され、ここに人生のすべてをかける北田雄夫さんの挑戦と挫折と成長の日々をつづるノンフィクション。

2014~19年までで参加したレースの合計は、なんと、総走行距離5332㎞! 総時間1420時間! 総費用1280万円! 気温差75℃!
貧⾎持ちで小心者、暑さ寒さに弱く⻑距離⾛も苦⼿――そう自認する北田さんは、なぜ「日本人初の7大陸レース走破」を達成することができたのか。そして、なぜその後も更なる極限に挑み続けるのか……!?

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新刊紹介

北田雄夫

きただ・たかお
1984年生まれ、大阪府堺市出身。中学から陸上を始め、近畿大学3年時に4×400メートルリレーで日本選手権3位。
就職後は一度、競技から離れるも「自分の可能性に挑戦したい!」と再び競技を始める。
2014年、30歳からアドベンチャーマラソンに参戦。
17年、日本人として初めて「世界7大陸アドベンチャーマラソン走破」を達成。
現在は「世界4大極地の最高峰レース走破」にチャレンジ中。

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