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マイナス30℃にもなるアラスカ560キロのレースに挑戦! 「困難に立ち向かう姿を見せることがアスリートの価値」という北田雄夫さん

2月28日から始まる「Iditarod Trail Invitational 」。極寒のアメリカ・アラスカを560キロ、約10日間かけてひたすら走り抜くアドベンチャーマラソンの大会です。

この過酷なレースに日本人として唯一参加を表明しているのが、著書『地球のはしからはしまで走って考えたこと』も話題の、北田雄夫さん。
プロアドベンチャーランナーとして活躍する北田さんは、コロナ禍で何を思い、どのような決意を胸にアラスカへ向かうのでしょうか。
レース参加直前、特別インタビューの後編です!

(聞き手・構成/よみタイ編集部)
2019年、アラスカのレースの様子。(写真提供/北田雄夫)
2019年、アラスカのレースの様子。(写真提供/北田雄夫)

創意工夫で自分らしい価値提供を

(前編より続く)

――北田さんの新しい挑戦といえば、「リアル飛脚便」も話題になりましたね。

ありがとうございます。あれは、依頼者の気持ちと依頼品を僕が走ってお届けするというサービスで、昨年の12月下旬にSNSで「こんなことを考えているんだけど、どうだろう」と発信したら思いのほか好評だったので、始めてみました。もちろん自分のトレーニングもかねているので、お受けできるのは、距離やタイミングが合えば、ですけど。

「リアル飛脚便」配送中の様子。リュックの中にお届け品が。(写真提供/北田雄夫)
「リアル飛脚便」配送中の様子。リュックの中にお届け品が。(写真提供/北田雄夫)

――実際にどのような荷物を運んでいるのでしょうか。

僕が走って運ぶので、依頼を受けられる荷物はリュックに入るサイズ20×15×30cm以内、重さ5kgまでとさせてもらっています。送料は距離1kmあたり400円。だから例えば600キロだと24万円。
ゆうパックなら数日内に日本全国1000円くらいで送れるわけですから、日本一、いや、もしかしたら世界一、遅くて高い配送サービスです(笑)。

それでもありがたいことに、その価値を感じてくださる方、応援してくださる方から依頼をいただきまして。

年末年始には、特殊トレーラーを扱う会社の社長さんから依頼を受けて、手紙の入った筒を、本社のある京都から支社のある福岡まで、約650キロの距離を走って届けました。

到着して筒を開けたら、中に2通の手紙が入っていて。1通は依頼主から支社の社員の方への手紙だったのですが、2通目は僕宛の手紙だったんです。まさか自分宛の手紙を持って走っていたとは、ぜんぜん知らなかった。その手紙には「完走おめでとうございます。これからも自分の思う人生を走り続けてください」というようなことが書いてあって、本当に感動しました。

トレーニングと実益を兼ねた新しい挑戦に、スポーツ界やメディアからも注目が集まる。(写真提供/北田雄夫)
トレーニングと実益を兼ねた新しい挑戦に、スポーツ界やメディアからも注目が集まる。(写真提供/北田雄夫)

――「リアル飛脚便」の発想はどこから?

トレーニングしながらお金も稼げて、他の人がやっていない自分ならではの価値提供ができたらという思いから始めました。
最近も、有名なスポーツ選手でも所属企業が変わったり、不祥事からスポンサーが離れてしまったりということがありましたよね。
アスリート活動にお金がかかることや大きなバックアップがあると助かることはまぎれもない事実なんですが、そこがメインになると本来自分が思うような活動ができないな、と。だから、自分なりの創意工夫で世の中に価値提供をしていきたいと考えています。

コロナ前まではレースのことばかりで頭いっぱいで、他のことに時間を注ぐゆとりがなかったんです。コロナによって、考える時間や新しい試みをする時間ができて、自分の活動や考え方に広がりができたというのはありますね。

だからといって、本職が飛脚になるわけではないのですが(笑)、トレーニングの一環として、できる範囲でこのリアル飛脚便の活動を今後も続けていきたいと思っています。

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北田雄夫

きただ・たかお
1984年生まれ、大阪府堺市出身。中学から陸上を始め、近畿大学3年時に4×400メートルリレーで日本選手権3位。
就職後は一度、競技から離れるも「自分の可能性に挑戦したい!」と再び競技を始める。
2014年、30歳からアドベンチャーマラソンに参戦。
17年、日本人として初めて「世界7大陸アドベンチャーマラソン走破」を達成。
現在は「世界4大極地の最高峰レース走破」にチャレンジ中。

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