2022.7.18
異端の経営学者が最果てのゲイタウンで考えた「商店街活性化」の鍵

沖縄の面白いおでん屋
「高橋先生、おでん食べに行こう!」
今から20年ほど前、沖縄大学に専任講師として採用された年の11月、ようやく沖縄での生活にも慣れた頃のことでした。夜間の講義が終わった後、国際通りに沖縄で初めて開店されたスターバックスでカフェラテを飲みながら論文執筆していると、突然、声をかけられました。
声の主は、私の授業を受けていて、授業終わりによく質問にくる社会人学生でした。
沖縄大学は那覇の中心部に立地しているため、国際通りから繁華街の松山にかけて、学生の遊び場になっています。当然、その学生も夜の街をぶらついていたわけで、たまたま私を見つけて声をかけてきたのです。
「おでん?」
「晩御飯食べた? この近くに、面白いお店あるさ」
おでん屋が面白い?
「面白い」という言葉に惹かれて、彼の後をついて歩いていると、国際通りから一本入った薄暗い路地裏にぐいぐい入っていきます。
きらびやかな国際通りから、距離にすれば200mほど奥に入っただけなのですが、嘘のように人通りがありません。沖縄独特の背の低いコンクリートを打ちっぱなしの長屋のような建物にアルミの扉が等間隔で並んでいて、申し訳程度の赤や黄色のランプが灯り異様な雰囲気に支配されています。よく見ると強い日差しと台風の雨風で消えかかった看板に、「スナック〇☓」と名前が書いてあり、耳をすませば懐メロを歌うオジィの歌声が聞こえてきたりします。
「ここです!」
学生が指差した先にあったのは、ここに来るまでに見た怪しいスナックとほぼ同じ作りでした。
「この店に入るには、儀式があるさ〜」
そう言いながら、学生はドアをノックします。
そうすると、隣の窓がカラリと開いて、女将さんが顔を出します。
「大丈夫ね?」
おばちゃんは私達の顔色を確かめてから、扉を明けてくれました。
カウンターとテーブル席を併せて10人も入ればいっぱいになる狭い店内に、大鍋でゆっくりと煮込まれているおでん。テビチとかソーセージが一緒に煮込まれていること以外、たしかにおでん屋さんでした。
京都によくある一見さんお断りのお店なのかと思えばそうではなく、女将も客も安心しておでんとお酒を楽しめるように、入り口の鍵をかけて泥酔客を入れないようにしているのだとか。この夜に初めて食べた沖縄おでんは、相当美味しかったことを覚えています。