2022.5.16
経営学者、キッチンカーでラーメン屋になる? 屋台が人間を解放してくれる理由とは

無いのなら、作ればよい!
私は福岡の大学に進学したこともあり、豚骨ラーメンにはちょっとうるさい。
多くの関東在住の九州出身者の方には同意してもらえると思うのですが、東京の豚骨ラーメンは弄りすぎて、もはや別物になっていることが多いのです。東京にローカライズされた豚骨ラーメンも美味しいのですが、青春時代を小倉で過ごした体が、もっとプリミティブな豚骨スープを求めてしまいます。
手に入らないなら、作るしかない。東京に勤務して10年目の今、気がつくと自宅に寸胴鍋があり、精肉店を巡り歩いて質の良い豚骨や豚ガラ、背脂を手に入れてはラーメンを自作するようになりました。素人料理とはいえ、ネットで検索すれば同好の士のレシピは沢山見つかりますし、それを参考に試作を重ねていけば、それなりに美味しいものを作れるようになります。今では、豚骨ラーメンを中心に、大好きな二郎系から濃厚の煮干し系ラーメンまで、色々作れるようになりました。
さて、ラーメンを自作していて困るのが、作りすぎたスープをどう処理するかです。豚骨や背脂は1kg単位で買います。そもそも、1kg単位じゃないと売っていないのです。1kg単位の材料が入る寸胴も当然大きくなる。当然、スープもたくさんできるのですが、これが日持ちしない。豚骨や鶏ガラスープだと2日くらい、魚介系のスープは翌日には味が落ちてダメになります。冷凍保存という手もあるのですが、作りたてのフレッシュなのがやはり一番美味しい。だったら、少ない材料で、食べ切れる分だけ作れれば良いのですが、材料を半減して作ると味が何故か落ちる。ですので、一人では食べ切れない量を作ってしまい、友達やゼミ生に振る舞ったりしています。
「旨すぎて、一ヶ月くらいラーメン欲が消えた」
一回目の緊急事態宣言の最中に作った二郎系ラーメンを食べた友人の発言です。旨くて当然。お店で売るつもりがないので、コストと手間を度外視で作っていますから。食べてみたい人は、東京都立大学に入学して高橋ゼミに入るか、どこかで私と出会って友人になってください。
そういう日々を過ごしていると、美味しい、プリミティブな豚骨ラーメンを食べたいという最初の欲求を超えた、別な欲求がムクムクと湧いてきてしまいました。
「美味しいラーメンを食べたいし、作りたいし、食べさせたい」
そんな欲望を抱えて悶々としていた昨年の春頃、ちょうど著書(『婚活戦略:商品化する男女と市場の力学』)の最終稿を入稿し、精神的にも肉体的にも余裕が出てきた頃でした。友人が子供と一緒にキャンプをするためにキャンピングカーを買ったのを見て、その手があったのかと釣りに使えるキャンピングカーを探しているうちに、これは!という車を見つけました。
それは、キャンピングカーの定番であるハイエースをベースとしたキッチンカーです。10万キロ走行と距離は少々走っていますが、値段は諸費用込みで120万円ほど。よく探すと、軽自動車の中古キッチンカーなら50万円ほどから入手可能です。
瞬時に、私の脳内でソロバンがパチパチと弾かれます。
改装込みで200万円も出せば、結構立派な車中泊機能付きのキッチンカーを手に入れることは可能。今の所、ラーメン10杯分の原価は4000円くらい。1杯500〜800円で売れば元は取れそう。売る場所は、船宿がある港の駐車場がいいな。朝4時とかに出船してお昼過ぎに帰港するから、お昼ごはんに丁度いい。よく行く港の釣り船は十数隻あって、土日は満員になるので港には数百人の人が出入りするから、出船前と帰港時に開店すれば30食分くらいは売れるよね……上手くやれば、釣り船の船賃と移動のガソリン代、車検費用くらいは稼げるかも?