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〝成瀬〟きっかけで訪れて、魅力満喫の弾丸旅!食に感激、疎水に癒され、歴史にひたる!【第6回 琵琶湖25時間の旅<後編>】

旅エッセイ『50歳からのごきげんひとり旅』が好評でロングセラーとなっています。
有益な情報と旅心を刺激するエッセイが旅渇望者の心を摑み、発売から1年以上を経て版を重ね続け12万部に。
本連載では、国内外の食へのあくなき探求心はもちろん、好奇心にあふれる料理研究家の山脇りこさんが、訪れるほどに深みにはまるという関西エリアを案内します。
今回は、ベストセラー『成瀬は天下を取りにいく』を読んで背中を強く押され訪れた滋賀への旅第5回の後編です。

イラスト/丹下京子 写真/山脇りこ

第6回 琵琶湖25時間の旅<後編>

滋賀で生まれた飛び出し坊やのとびた君。鰻と鯉を持つバージョン
滋賀で生まれた飛び出し坊やのとびた君。鰻と鯉を持つバージョン

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『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈)に誘われて琵琶湖ミシガンクルーズに行った後は、近江八幡で近江商人の心得の薫陶を受け(前編はこちら第5回)、再び大津へ。
 今回の宿は「商店街ホテル」とな? なにそれ? と思いますよね。これが大津のアーケード商店街・旧東海道沿いに点在する築100年前後の空き古民家をリノベして、それぞれを個性ある宿泊施設にした7棟からなる「HOTEL 講 おおひやくちよう」。
 大津百町の名の由来は文字通り、ここに百の町があったから。東海道最大の人口を誇り、繁栄していた江戸時代中期、大津にはぴったり百の町があったそうだ。しかし、現在の大津の商店街はちょっと寂しくなってきて、このホテルは、町を、商店街を、なんとか再生したいとの思いから生まれたプロジェクトなのだそう。
 このままだとシャッター通りになってしまうのでは? と危惧する商店街は全国にあると思う。私も故郷の長崎で、昔の賑わいを知り愛しているがゆえに不安を感じることがある。そんな商店街を観光資源化して、外から人を呼ぼう、となればホテルだ、と。
 手掛けたのは滋賀県竜王町が本拠地の谷口工務店さん。このホテルのオーナーだ。「いつか日本一愛される工務店になりたいと、ずっと思ってきました。それ以前に、滋賀県一愛される工務店になろう」。ホテルの部屋に置いてあった『THE STORY OF 講』にはそう書かれていた(泊まったら必読です)。
 リノベはお手のものと思いきや、いずれも新築より費用がかかるような古い物件。解体して詳しく調べなければ状態のわからない物件に想像以上に手こずり、費用も膨らむ中で、根気強く作り上げたそう。
 私が泊まったのは7棟のうち一番大きな建物「近江屋」。1棟にホームアローンは無理と思って、7棟全体のレセプションも兼ねたこちらに。2階にコンパクトで機能的で美しく、ひとりに対して広すぎない3つの独立した部屋があるのだ。室内は貴重な太い梁を残しながらも機能は最新。私にとって大切なお風呂も、バスタブが大きめでサイコー、北欧家具がでしゃばらず、しゃれている。快適すぎて、1か月くらい暮らしたいなと思った。
 このホテルを予約したときに合わせて予約したのが、「商店街ガイドツアー」。この日の朝、ちょっと寂しめの商店街を駆け足で通りながら、ここ?と一抹の不安もあったのだけど、逆にここをどのようにツアーする? と楽しみになっていた。

HOTEL 講 大津百町
HOTEL 講 大津百町

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大津百町、商店街ガイドツアーへ

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 蓋を開けたら、この日の参加者は私だけ、つまりマンツーマンでツアーが始まった。案内してくださるのは大津生まれ大津育ち、町づくりにもかかわり、今はリタイアされているという、凛としたたたずまいのAさん。
 まずは大津について、絵がいっぱいの大型本を見せていただきながら楽しく勉強。東海道と中山道の終着地である大津(知らなかった)は、江戸時代は毎日1万人以上が行きかう大拠点だったのだそう。東海道五十三次の「宿場町」であり、琵琶湖水運の「港町」であり、西国三十三所観音霊場の札所のひとつ三井寺(園城寺)の「門前町」でもあった。一時は東海道最大の人口を誇っていたのは前述の通り。
 歴史は古く、戦国時代、豊臣秀吉が琵琶湖から京都・大阪へとつながる拠点として大津城を築城させたところからはじまるらしい。江戸時代は天領に。
 東海道有数の宿場町・大津の土産物として大人気だったのが「大津絵」。いくつか図鑑で見せていただいたが、なんともかわいい。鬼もゆるキャラっぽくて、セリフや格言のようなものが入った絵もあり、漫画みたいだ。「今も老舗の店先によく飾られていますよ。代々描かれている方も現役でいらっしゃいます」とのこと。
「琵琶湖との深いつながりによる独特の食文化も忘れてはなりません」とAさん。待ってました! と目を輝かせたのは言うまでもない。
「それで、なんに興味あるん?大津絵?」と聞かれたので「いや、食べ物です」と即答した。「調味料とか、酒蔵とか、鮒ずし、鯉料理、漬物」と。いや大津絵も歴史も気にはなりますが。
「わかりました、では行きましょう」。Aさんの中でルートが作られたようで、いざ商店街へ出発。

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山脇りこ

料理研究家。東京都内で料理教室を主宰。長崎県の日本旅館に生まれ、四季折々の料理に触れながら育つ。旬の素材を生かした野菜料理や保存食が特に得意。食いしん坊の旅好きで、国内外の市場や生産者めぐりがライフワーク。特に台湾はガイドブックを刊行するほどのリピートぶり。著書に『50歳からのごきげんひとり旅』(大和書房)『50歳からはじめる、大人のレンジ料理』(NHK出版)『食べて笑って歩いて好きになる 大人のごほうび台湾』『いとしの自家製 手がおいしくするもの。』『一週間のつくりおき』(ぴあ)『台湾オニギリ』(主婦の友社)など多数。

http://www.instagram.com/yamawakiriko/

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