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顔より先にポーズが思い浮かぶ人、五郎丸歩の引退によせて〜五郎丸歩(ラグビー選手)

肝心なのは「ポーズ」ではなく「いつもと同じ」こと

こうしたブームに対して、当時も現在も五郎丸自身は「違和感を覚える」と発言している。
そもそもこの「五郎丸ポーズ」はそれ単体で成り立つ動作ではなく、キック前に精神集中し、普段通りのパフォーマンスを発揮するために行うルーティンの一部なのである。ボールをクルクル回して感触を確認してからキックティーにボールを立て、立ち上がって後ろへ3歩下がり、左に2歩動く。その後「五郎丸ポーズ」をとり、体重移動を意識してボールを蹴る、という流れになっている(参考文献:五郎丸歩著・大友信彦編『不動の塊』実業之日本社)。
つまりこのポーズそのものに重要性があるわけではなく、「いつもと同じ」であることが重要なのである。実際、海外移籍を経て2017年にヤマハ発動機に復帰して以降は、五郎丸はこのポーズを行っていない。

しかし、人間は第一印象のイメージをずっと引きずってしまう生き物でもある。昨年、日本で開催されたラグビーワールドカップの日本代表には、五郎丸は選出されていなかった。にもかかわらず多くの人が、「五郎丸はどこだ」「なぜ代表に選ばれていないのか」と疑問を投げかけているのを耳にした。普段ラグビーを観ない人であっても、6年前に刻まれた「五郎丸ポーズ」の印象が強烈であったことが窺える。五郎丸本人は本意ではないかも知れないが、ラグビーという競技の普及に、確かに「五郎丸ポーズ」は貢献しているのだ。

五郎丸は昨年12月9日、今年の1月16日から始まるトップリーグのシーズンを最後に現役引退することを表明した。会見において五郎丸は、引退後の動向について「全くの白紙」であり「シーズンを終えた後に考えたい」と語ってはいたが、恐らくラグビー普及のために活動していくのではないだろうか。
そうした活動の中で、いつしか「五郎丸ポーズ」ではなく「五郎丸本人の顔」が先に思い浮かぶようになるだろうかと思いつつ、今は五郎丸の現役最後のプレーをしっかり目に焼き付けておきたいと思う。

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オギリマサホ

1976年東京都出身。イラストレーターとしてシュールな人物画を中心に雑誌や書籍などで活躍。中学1年までは巨人ファンだったのが、中2のときに投手王国・広島カープに魅せられ、広島ファンに転向。そのカープ愛が炸裂するイラストエッセイ『斜め下からカープ論』を刊行。野球のみならず、広くスポーツ界を愛している。
Twitter@ogirim

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