2020.11.10
いつか躍動美あふれる室伏広治の彫像が建つ可能性について考える~室伏広治(元ハンマー投げ選手)
ハンマー投げ選手としては、数々の輝かしい実績と前人未踏の記録を残し、2004年のアテネ五輪金メダルを評価され、紫綬褒章授与。2016年6月、競技引退の意向を表明したのちは、東京医科歯科大学で、スポーツ科学部門を担当するスポーツサイエンスセンター長に就くなど、スポーツの発展と普及に貢献し続けている。
端正な顔立ちと躍動感あふれるそのフォームは人体美の極み
古代ギリシャ彫刻の歴史をひもとくと、前480年~前330年頃の「クラシック期」の彫像には、それ以前の「アルカイック期」の直立不動のポーズに対して、片足に体の重心をかけ、もう片方の足でバランスを取る「コントラポスト」と呼ばれるポーズが多く見られるようになっている。
この「クラシック期」における代表的な作品の一つがミュロン作の「円盤投げ像」で、人体の美しさと躍動感がいかんなく表現された作品だ。
……なぜいきなり美術史のような話で始まったのかといえば、去る10月1日、元陸上男子ハンマー投げ選手・室伏広治がスポーツ庁長官に就任したというニュースを見たからであった。テレビに映る室伏の姿は、顔も体躯も現役時代とさほど変わらないように見えた。室伏の端正な顔立ちと盛り上がった筋肉を見ると、私はどうしてもギリシャ彫刻、特に「円盤投げ像」を連想してしまうのである。
その室伏の現役時代の活躍は、誰もが知るところだろう。
1998年、同じくハンマー投げ選手であった父・重信の日本最高記録(75m96)を上回ると、その後も記録の更新を続け、2003年に記録した84m86の日本記録は未だ誰にも破られていない。さらに4大会連続で五輪出場し、2004年のアテネ五輪で金メダル、2012年のロンドン五輪では銅メダルを獲得している。