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オギリマサホ「スポーツ界イケてる顔面図鑑」

大坂なおみが試合で着用するマスクから伝わるもの〜大坂なおみ(プロテニス選手)

マスクで表明し続けるメッセージ

大坂はハイチ系アメリカ人の父と日本人の母を持ち、3歳からアメリカに在住している。現在は日本国籍を取得しているが、ハイチ、アメリカ、日本という3つのルーツを持つ。

大坂が準決勝棄権を表明した時、多くの賛否両論が寄せられた。しかし3つのルーツを誇りに思っている大坂にしてみれば、今回の黒人男性銃撃事件は、自らのアイデンティティにも関わる看過できない事件だったのではないだろうか。8月に着用していた攻撃的な印象の「ヴェノムマスク」は、もしかすると大坂自身の怒りの表明だったのかもしれない。

大坂の抗議に同調し、大会運営側は27日の試合を1日延期することを決定した。この決定を受けて大坂は棄権を撤回し、準決勝に出場することになったのである。この準決勝に登場した大坂は「ヴェノムマスク」ではなく、黒い無地のマスクをしていた。そして着ているTシャツは、突き上げた拳と「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」とプリントされたものであった。この日は、マスクではなくTシャツのメッセージに注目してほしい、という大坂の意志が読み取れるようでもあった。

準決勝には勝利したものの、この試合で左太ももを痛めた大坂は、結局決勝戦を棄権した。
8月31日から始まった全米オープン1回戦には無事出場し、勝利をおさめた大坂。その入場の際には、3月にケンタッキー州の自宅で警官に撃たれて死亡したアフリカ系米国人の救急救命士、ブリアンナ・テイラーさんの名前が記されたマスクを着用していた。
大坂は、全米オープンにおいては、人種差別の犠牲者の名前が入ったマスクを装着する計画を明らかにし、「合計7枚あるけれど、7枚では実際の名前の数に不十分なのはとても残念」であり、「願わくば、決勝まで勝ち進んで皆さんに全部見てもらいたい」と語ったという。大坂の願い通り、我々は全てを見届け、人種差別問題について考えていきたいと思う。

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オギリマサホ

1976年東京都出身。イラストレーターとしてシュールな人物画を中心に雑誌や書籍などで活躍。中学1年までは巨人ファンだったのが、中2のときに投手王国・広島カープに魅せられ、広島ファンに転向。そのカープ愛が炸裂するイラストエッセイ『斜め下からカープ論』を刊行。野球のみならず、広くスポーツ界を愛している。
Twitter@ogirim

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