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目標を持つことの強さを、朝比奈沙羅に教わった気がする〜朝比奈沙羅(柔道選手)

麻酔科医の父と歯科医の母のもとに生まれ、都内でも有数の進学校である渋谷教育学園渋谷中・高に通っていた朝比奈。
現役で東海大の医学部を受験するが不合格となり、体育学部に進学。その後も医学部を目指して勉強を続け、東海大卒業後の昨年10月、獨協医大医学部のAO入試に合格したという。

「アスリートが医師を目指す」という点では、東京五輪後に医学部を受験することを公言しているラグビー日本代表・福岡堅樹と共通するものがあるかも知れない。その福岡との対談では、自らを福岡と比べて「レベルが違う」と謙遜していたが(「日刊スポーツ」2018年9月27日)、言動の端々から「あぁ、この人は頭がいいんだな」と感じさせられることが、朝比奈にはある。

たとえば英語力。2018年9月、アゼルバイジャンで行われたバクー世界柔道選手権大会で優勝した後、朝比奈は海外メディアのインタビューに対して流暢な英語で受け答えしていた。また、所属する実業団・パーク24柔道部のブログに朝比奈が投稿する記事は、どれも文章が読みやすく要点がまとまっている。
知性と強さの共存。
まさに「文武両道」とは朝比奈のためにあるような言葉だ。

とは言え、「文武両道」という言葉でイメージするような堅苦しい印象は朝比奈からは受けない。
いつも満面の笑顔を浮かべ、とても自信に満ち溢れている。柔道着が似合うのはもちろんだが、今回の学生証授与式のスーツ姿、東海大卒業式の際の鮮やかな青い振袖姿などもとてもよく似合っていた。
見ているこちらまで笑顔になってくるほどだった。

自分にとって頑張れるものがあることは素晴らしいと「今」断言できるあなたが素晴らしい

そんな朝比奈だが、以前は東京五輪を区切りに現役引退し、医学の道に専念すると発言していた。
皮肉にも五輪代表を逃したことで、医学生として現役を続行し、次のパリ五輪を目指すことにしたようである。

朝比奈は昨年、
「人に勉強もしなくてはいけないとか言うつもりはないけど、頑張れるものがあるのは素晴らしいことと思うし、何か一つ愛せるものがあるのは素敵なことだと思う。自分にとって愛せるものが勉強と柔道だったというだけのことで、(人に)文武両道になりなさいとか言うつもりはないです。ただ、自分の姿を見て勉強も柔道も頑張ろうと思ってくださる方が増えるなら自分は幸せです」(デイリー新潮
と語っていた。

朝比奈の自信に満ち溢れた強い笑顔、それは「勉強と柔道」という愛せるものを追求し、「パリ五輪」「医師」という明確な目標を持っているからこそ生まれるものではないだろうか。

先行きが見えない今の世の中、朝比奈の笑顔をぜひ見習っていきたいと思う。

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オギリマサホ

1976年東京都出身。イラストレーターとしてシュールな人物画を中心に雑誌や書籍などで活躍。中学1年までは巨人ファンだったのが、中2のときに投手王国・広島カープに魅せられ、広島ファンに転向。そのカープ愛が炸裂するイラストエッセイ『斜め下からカープ論』を刊行。野球のみならず、広くスポーツ界を愛している。
Twitter@ogirim

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