2018.11.17
“良い接客ができたのか?”の判断基準はどこにある
ヘアサロンでシャンプーをしてもらうとき、困りません?
「お湯の温度、熱くないですか?」って聞かれても、答えにくいですよね(笑)。
美容師アシスタント1年目のころ、シャンプーのときにそのお声がけをどうすれば良くなるかすごく悩みました。
お客さまが気づかないところまでこだわる
この聞き方だと、シャワーのお湯の温度が冷たかった場合、言いづらくなる人もいるかもしれないな、と。
そこで次に「お湯の温度はいかがですか?」と言うようにしてみました。
そうすると今度は、質問がふんわりしすぎている。
どんな状況にも対応できる言葉を選んだせいで、YES・NOで答えらない。
答えを考えるという負担をかけてしまっている気がして、しっくりきませんでした。
結局今は「お湯加減はよろしいですか?」にしているのですが、もっといい言い方がある気がして、まだ模索しています(笑)。
「その質問は答えにくいだろう!」とお客さまから苦情を入れられることなんて、まずない。
「答えやすく質問してもらえて助かります」と言っていただけることも、ない。
言ってしまえば、考えすぎている。別にそこまでこだわらなくても問題がないところなんですよ。
でも、ここまで考えるのが正しいと自分では思っています。
考えてないからといって、苦情が来るわけではないこと。
突き詰めたからといって、必ずしもお客さまが気づいてくれるわけではないこと。
そこまでしっかりこだわって、初めて感動させる接客ができるんじゃないかな。
お客さまに合わせる接客、合わせない接客
僕が思う「感動する接客」とは、お客さまの予想を越えた接客です。
「ここまでやってもらえるんだ!」と思っていただく。
そのためには「ここまでする?」っていうところまで気にしなくてはいけない。
さらに、お客さまに合わせて接客を変えていくことも大切です。だって、どの接客が心に刺さるかは、人それぞれですから。
例えばヘアサロンだと、美容師に対して「たくさん話してほしい」と思っているお客さまと、「話しかけないでほしい」というお客さまがいます。
お客さまがどちらを求めているか、きちんと見極められなければいけません。
例えば、最初に自己紹介をしたときに、鏡の中で目が合わない場合は「話しかけないでほしい」というサインである場合が多いですね。
どんなときもお客さまの発言、行動、視線をしっかりと見て、できるだけ正確に判断できるように気を配っています。
逆に、どんなお客さまが来ても変えない、と決めていることもあります。
それは、敬語を使うこと。
当たり前のように聞こえるかもしれませんが、ヘアサロンの接客って、フレンドリーになりがちなんですね。学生さんもたくさん来ますし。
学生時代、初めて行ったヘアサロンで最初からタメ口で話されて、ちょっと嫌だったんですよね(笑)。
だから、自分は今絶対にやらないと決めている。
自分がされて嫌なことはしない。それが、接客の基本だと思うから。
常連のお客さまとすごく仲良くなった場合は、くだけた会話をすることもありますよ。でも、ご案内やお会計のときのような、完全に「接客モード」になるべき場面では絶対に敬語を使うようにしています。
基本は、お客さまと店員という関係です。きちんとすべきところは、きちんとする。
この点に関しては、どんなお客さまがいらっしゃっても、絶対に変えません。
お客様の〝脳″が先にお帰りになっていると接客は失敗
接客がうまくいったかどうかも、お客さまの発言や行動、視線で判断しなければいけません。
苦情を入れるレベルでなければ、「接客が不十分だ」「刺さらなかった」なんて、お客さまはいちいち教えてくれない。
本人も、満足しているかどうかなんて考えてないこともあります。
だから僕は、お客さまを送り出すときに判断しています。
〝脳が帰り道モードになるまでの速さ″
これが判断するポイントです。
お店の前で「ありがとうございます」と言ったとき、僕がまだ目の前にいるのに、お客さまが、既にお帰りモードになってしまっているなら、接客が刺さらなかったということです。
目が合わなかったり、生返事だったり、というようなときは、お客さまの頭の中は完全に帰り道や次の予定を考えられてることが多いですね。
その場で落ち込んでいては仕事が回らないのですぐ切り替えますが、そのあとでしっかり反省する。
「今日は時事的な話が刺さらなかったから、今度は季節の話をしてみようかな」とか。
もちろん次にお客さまがご来店するときまで、しっかり記憶していますよ。
お客さまがサロンに満足する理由は、技術やお店の雰囲気などもあるので、一概に僕のせいとは言えません。そもそも、男性の美容師が苦手だという方ももちろんいらっしゃいます。
けれど、可能性があるなら、より良い接客をして「このお店に来てよかった」と思っていただけるようにしたい。
次はお帰りのときに、エレベーターが閉まるまで目を合わせてくれていたら最高ですね。
僕は、ずっと目が合い続けていたとき「今日の接客は良かったんだ」と感じることができるんです。
とにかく完璧に接客をしたい。
お客さまに感動してもらいたい。
そう考えていますが、これは僕が「接客する側」のときの話。
「接客される側」のときはまた少し違った考え方をしています。