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戦国メイドカフェでの柴田勝家の全盛期? そして新時代の幕開けへ……

「私の名字も朝倉から変わりまーす!」

 後日、戦国メイド喫茶で「朝倉きょう生誕祭&改名式」が執り行われた。

 入り口にはワシらが注文したスタンドフラワーが立ち、客席には普段から話す常連さんたちもいるし、大所帯となった朝倉軍もまとめてボックス席に陣取っていた。

「みんなー、今日は来てくれてありがとー!」

 きょうちゃんの衣装はアニメ『マクロスF』の歌姫シェリル・ノームのコスプレだった。ワシにとっては元推したる前田きゃりんちゃんとの思い出もある特別なもの。ある意味では、ワシにとってのきゃりんちゃんの物語が今日で塗り替わる、その象徴でもあった。

「本当に嬉しい、こんなに集まってくれて良かった」

 きょうちゃんが声をかければ誰もが嬉しそうにする。朝倉軍も大いに盛り上がり、それ以外の常連さんたちも楽しそうだ。店は満席、イベントは大成功、きょうちゃんの人気を示すのに相応しい舞台だった。一年前の不穏さはどこにもなく、まさに人気メイドのイベントとしての貫禄があった。

「それで、今日は発表があります。改名式なので、私の名字も朝倉から変わりまーす!」

 ライブを終え、壇上に立つきょうちゃんが明るく宣言する。他のメイドさんたちが持ってきた巻物を受け取り、それを大きく広げる。

 そこに書かれていた名前は「織田きょう」だった。

「今日から私は、織田信長の娘の、織田きょうです!」

 店内がざわめいた。それも当然である。店の長い歴史の中でも、織田の名跡を持つ者は少なく、ここ数年は存在しなかった。単純に信長の名前が大きすぎて、それに見合ったメイドさんじゃないと名前負けしてしまうからだ。

「しかし、彼女は認められた、ってことか」

 感慨深いものがある。きょうちゃんを店で一番の人気メイドにすると約束したが、それが巡り巡って織田信長の娘という名前を得るに至った。まさに絶頂期の始まり、名実ともに戦国メイド喫茶のナンバーワンとなった瞬間だった。

「これからも頑張っていくから、みんなもついてきてくださいね!」

 壇上にはきょうちゃんの笑顔。それは彼女なりの天下布武の宣言であり、それと同時にワシらが織田軍として先へ進むことが決まった。

 かくして戦国メイド喫茶は新しい時代へと突入し、このエッセイも佳境となるのだ。

 次回連載第20回は8/25(木)公開予定です。

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柴田勝家

しばた・かついえ
1987年東京生まれ。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程前期修了。2014年、『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞し、デビュー。2018年、「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」で第49回星雲賞日本短編部門受賞。著書に『クロニスタ 戦争人類学者』、『ヒト夜の永い夢』、『アメリカン・ブッダ』など。

Twitter @qattuie

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