よみタイ

ライジング!

第11回 同業他社への「愚痴」は要注意!?

酒がすすみ、ついつい口も滑らかに

「ついにオレも新連載を立ち上げることになってさ」
「本当か!? やったじゃないか!」
「新人作家でさ。絵は上手いんだけど話がちょっとアレで、オレがさんざん手を入れてようやく連載会議に通ったんだよ。この分だと連載始まってからも、オレが話考えなくちゃいけなくなりそうで本当参ったよ」
 参ったという言葉とは裏腹に、夢岡は満面の笑みだった。結局、今日自分を飲みに誘ったのは、この話を聞かせたいがためだったのだろうと松田は思った。新連載漫画を立ち上げるのは並大抵の努力ではないだろう。それを成し遂げたという事実を、夢岡はとにかく一人でも多くの人に聞いて欲しかったのだ。
「ドリーすごいじゃないか」
「いやいや。連載立ち上げは別にすごくないって。あくまでも通過点だ。こっから人気作になって初めてすごいって言えるかもな」
 
 喋りながら夢岡はマッコリをクイクイ飲み続けた。ボトルに残った酒はもう三分の一ほどになっている。マッコリは圧倒的に飲みやすい分、ちゃんとペースを考えなければいけない。
「飲み過ぎじゃないか」
 最初はそうやって注意していた松田だったが、程なく夢岡に釣られてペースが上がっていた。視界はボヤけ、妙な浮遊感も出て来て気持ちがいい。

その愚痴や自慢話、機密情報含まれていませんか?
その愚痴や自慢話、機密情報含まれていませんか?

「あ~、あとこの前オレ春山先生に会ったぜ。編集部にいらっしゃったときに挨拶させてもらったんだ。ファンですって言ったら笑いながら握手してくれたよ」
 夢岡の自慢話はまだ続いていた。何となく対抗心が湧いた松田は、フッと笑って夢岡に言った。
「オレもこの前、作家さんに会ってサインもらったけどな」
「へ~。誰だよ」
「天神旭也先生」
「ええっ! 超大御所じゃねーか! 漫画編集部でもないお前が、何で天神先生に会えたんだよ!」
「へへっ。それは言えないなあ。ちょっと今、大きなプロジェクトに関わっててさ。それ関連でお会いできたんだよ」
「なんだよ。もったいぶってないで言えよ~。俺たち親友だろ!?」
「いや、いくら相手がドリーでも言えないな。いや……ドリーだからこそ言えないって言い方もできるかな」
「いつからそんなもったいぶった喋りをするようになったんだよ。お父さんは悲しいぞ」
「お前の子になった覚えはないよ。……でもそうだな、アプリ関連かな」
「ってことは〝漫to漫〟のリニューアル復活か?」
「違うって。じゃあここだけの話だぞ。実はな――
 
 夢岡の自慢話にも飽きていた松田は、酔いの心地よさも手伝って〝マンガホープ〟の事をほんの少しだけ明かした。
 好きな子を親友だけに耳打ちするような、ちょっとした秘密の共有。学生時代は、そんな些細なことが特別だったし、楽しかった。松田は夢岡と語り合いながら、楽しかった学生時代を思い出していた。

 (以下、次回に続く)

 連載小説「ライジング!」次回は4/30(金)公開予定です。お楽しみに!

1 2 3 4

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

志田用太朗

京都府出身。小説家。
第16回エンターブレインえんため大賞優秀賞を獲得して、2015年にデビュー。
集英社みらい文庫からは『僕らのはちゃめちゃ課外授業 一発逆転お宝バトル』シリーズなどが好評発売中。

週間ランキング 今読まれているホットな記事