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ライジング!

第3回 会議で全く存在感を示せないときは、神保町のカレーでパワーチャージ!

神保町のランチと言えば、カレー!

 野島が連れて来てくれたのは、人気のカレー屋〝HOT BURNホットバーン〟だった。
 照鋭社のある神保町は、カレー屋の宝庫だ。チェーン店だけでなく、昔からやっている老舗の名店が多く、日本一のカレー激戦区の呼び声も高い。
 
 チキンカレーを注文してお冷を飲みながら松田は言った。
「野島さん……僕、役に立ちたいです」
「急にどうした」
「いや、なんか全然何もしてないなって思って」
「打ち合わせしてるじゃないか」
「その打ち合わせで何もしてないなって」
「そうか?」
 首をかしげる野島に、松田が「そうですよ!」と詰め寄る。
「野島さん! 僕、役に立ちたいんです!」
「それさっき聞いた……」
 野島は若干引き気味だ。

 するとそこへチキンカレーが運ばれてきた。チーズが振りかけられたご飯を盛った皿と、魔法のランプのような形のグレイビーボートに入ったカレーのルゥ。さらに別皿で蒸した皮つきジャガイモも二つついている。注文したわけではなく、デフォルトでついて来るのだ。
「まぁ食え」
 野島に言われて松田がご飯にルゥをかける。湯気と共にふわっと、スパイシーで甘みの感じる香りが立ち昇って来る。最高に食欲をそそる香りだ。米にかかっていたチーズは、ルゥと米の熱で優しくとけ出し、ルゥと一体となっていく。
 松田はたまらずスプーンをつかみ、カレーを多めにすくって口に入れた。うまい。具材は全く見えなくなるまでトロトロに煮込まれており、見た目は至ってシンプル。しかし口に入れた時に感じる味の深みはすさまじい。
「うまいか?」
「うまいです!」

神保町はカレーの名店だらけ
神保町はカレーの名店だらけ

 それ以外の感想が出ないぐらい完ぺきなカレーだ。半分ほど食べた所で、松田は別皿のジャガイモを手にとった。丁寧に皮をむいて口に放り込む。水分が抜けていない、ホクホクの蒸し具合がたまらない。カレーの中に入れて食べる派の人もいるが、松田は別で食べる派だった。
「このジャガイモがいい仕事してんだよなぁ」
 野島の言葉に松田も頷く。野島はツーっときれいに皮をむいている。
「別皿で出てくるし、一見別物に思えるんだけど、やっぱりカレーを構成する一部なんだよこのジャガイモは」
「僕もそう思います……あっ!」

 そこで松田は、はたと気が付いた。野島はこのジャガイモの存在を、松田に例えようとしてくれているのではないだろうかと。
 実はいい仕事をしているジャガイモ。最初は別物だと思われていても、実は大事な存在。なくてはならない存在であるジャガイモ。お前もそんなジャガイモのような存在になればいいんだよ。きっとそう言ってくれているのだ。
 実は野島は特にそんなことは考えていなかった。ただジャガイモの存在を褒めただけである。しかし松田はそれを知らない。
「ありがとうございます、野島さん! 僕がんばります!」
「お、おう」
 急にやる気がみなぎる松田を見て野島は、お腹がいっぱいになると元気になるヤツなのかな……と考えていた。

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志田用太朗

京都府出身。小説家。
第16回エンターブレインえんため大賞優秀賞を獲得して、2015年にデビュー。
集英社みらい文庫からは『僕らのはちゃめちゃ課外授業 一発逆転お宝バトル』シリーズなどが好評発売中。

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