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ライジング!

第1回 なんで僕が漫画アプリ開発担当に!? 激辛な日々に訪れた大プロジェクト

なんで僕が立ち上げメンバーに!?

“プロジェクトメンバー”の響きはかっこいいけれど
“プロジェクトメンバー”の響きはかっこいいけれど

 会議室には小柴のほかにもう一人誰かがいた。顔は見たことはあるが、名前は知らない。誰だろうか……。そんな疑問が顔に出てしまったのか、小柴が自ら紹介をしてくれた。
「私がヤングホープ編集長の小柴で、こっちが副編のヤジマ」
ノジマ・・・です」
 何度も繰り返されたやりとりなのだろうか。野島はきわめて平板にツッコんだ。
 松田が少し呆気に取られながら「デジタル開発部の松田太陽です」と自己紹介すると、小柴が「座って」とイスを勧めてきた。
「あ、はい」
 ストンとイスに座った松田に、小柴はさっそく本題を切り出した。
「いきなりで悪いけど、照鋭社青年漫画誌初の漫画アプリ〝マンガホープ〟の立ち上げプロジェクトメンバーに、キミを選んだからよろしく」
「えっ!?」
 急な話すぎて脳の処理が追い付かない松田に、野島が補足説明を入れる。
「企画は立ち上がったばっかりで、まだここから詰めて行くんだけど、とりあえず我々三人が〝マンガホープ〟プロジェクトの初期メンバーってことになります」
 野島の言葉を小柴が引き取る。
「〝マンガホープ〟プロジェクトが始まるといっても、キミの所属はデジタル開発部のまま。私と野島もヤングホープ編集部所属だけど、〝マンガホープ〟の立ち上げ業務も同時にやっていく感じ。ちょっと忙しくなるかもね」

 一気に説明されて軽いパニック状態になっていた松田は、数ある疑問の中から一番大きなものを小柴に投げかけた。
「どうして僕なんかが?」
 それは一番気になる所だった。デジタル開発部では一切仕事を任されない自分が、どうして急に大きな仕事を振られるのか。
 松田の質問に、小柴はあっさりと答えた。
「私が適任だと思ったからだよ」
 しかし松田は納得できなかった。いま社内で一番信頼されていないと言ってもいい自分が、新しいプロジェクトの立ち上げメンバーに選ばれるはずはないのだ。
 ……と、ここで松田は自分なりの結論が出てしまった。
(デジタル開発部で一番ヒマな人間だからだ)
 アプリ立ち上げプロジェクトとなると、ある程度デジタルに明るい人間がいた方がいい。照鋭社ではデジタル開発部にいる人間がそれにあたる。
 きっと小柴は、デジタル開発部の部長に、適任者はいないか聞いたのだろう。そこで部長は一番手すきで、いなくなっても仕事に影響しない自分を推薦したのだ。それ以外は考えられない。
 
 松田はうつむいてギリッと奥歯をかみしめた。悔しい。これほどまでに自分はデジタル開発部内で軽んじられているのか。
 松田は、ここ半年ため込んでいた不満や鬱憤が、体の奥底からエネルギーとなって燃え上って来るのを感じていた。自分をバカにしたヤツらを見返したい!
「あとは本人にやる気があるかどうかなんだけど」
 小柴の問いかけに松田は食い気味に答えた。
「やります! やらせてください!」
 半年ぶりに、やる気のスイッチが入った瞬間だった。

(以下、次回に続く)

 連載小説「ライジング!」次回は3/26(金)公開予定です。お楽しみに!

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志田用太朗

京都府出身。小説家。
第16回エンターブレインえんため大賞優秀賞を獲得して、2015年にデビュー。
集英社みらい文庫からは『僕らのはちゃめちゃ課外授業 一発逆転お宝バトル』シリーズなどが好評発売中。

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