2018.12.19
ペットもコンタクトレンズをつける時代に!?動物医療最前線!
犬の視力は0.3だけど動体視力はイチロー以上!?
ペット用のコンタクトレンズ…とても気になりますが、まずは犬の眼について確認しておきましょう。眼のしくみは人も動物もほぼ変わりません。角膜で光を取り入れて水晶体で映像を結び、網膜に取り入れられた視覚情報を視神経で脳へ伝えます。でも私たちと同じ景色を見ていても、実は見え方が違うのです。
犬の視力は0.3程度と言われています。目が悪いかというとそうではなく、人の視野が約180度なのに対し、犬は約250度を見渡せます。さらに獲物を探すための動体視力にも優れ、犬種によっては1000メートル以上離れた動くものに反応できることがわかっています。野球のイチロー選手も動体視力が優れているそうですが、犬はそれ以上ですね!ただし犬の眼は赤色を認識できないようで、黄色や青色の世界を見ていると考えられます。
視覚障がい者の眼となる盲導犬へのサポートから始まった
犬の眼に関する病気やけがも人とほとんど変わりません。逆さまつ毛や潰瘍で角膜が傷ついてしまうこともあります。そこで眼の保護する必要があるペットのために誕生したのが、犬用コンタクトレンズの「わんタクト」。人のコンタクトレンズは視力や乱視を調整する役割がありますが、わんタクトは眼につける透明な絆創膏のようなもの。この特殊なコンタクトレンズの開発のきっかけはシードの技術と動物への愛情からでした。経営企画部担当の金澤さん、梶原さん、大津さんにうかがいました。
「私たちは『見える』をサポートするのが使命と考え、コンタクトレンズを中心に開発しています。犬へのサポートを始めたのは盲導犬(アイメイト)がきっかけ。眼の不自由な方の見えるもサポートしたいという思いで、盲導犬への寄付や啓発活動を始めました。そこから動物への感謝の気持ちが生まれ、動物全体のQOL(生活の質)の向上を実現するための『一般社団法人あにまるすまいる』を立ち上げたのです」(大津さん)
「会員になってくださった獣医師から、ペット用コンタクトレンズのサイズ選びが難しいという話を聞いたのが開発につながりました。動物の『見える』もサポートしたいという気持ちでいます。社員も動物好きが多くて、愛犬のことを『うちの娘』という者もいるほどです(笑)」(金澤さん)
ペットのコンタクトレンズ自体は10年ほど前からありましたが、わんタクトは犬種ごとに角膜を測定し、チワワやプードルなど4種類に分けて展開しているのがポイント。測定の際に苦労したのは、犬の視線を測定器に集中させることでした。獣医師以外の人は存在を消すように努め、犬が視線を向けるまでずっと待っていたそうです。工夫を重ねて2018年8月に誕生したわんタクトは、獣医師から選択肢が明確になったと好評だそうですよ。
動物病院では年間約1万枚を処方している
ペットのコンタクトレンズの市場規模はどのくらいかというと、シードの調べでは動物病院で年間約9500枚が処方されていました。人のコンタクトレンズの装用人口は約1600万人(シード調べ)と考えたら規模は小さいものの、予想よりも多いのではないでしょうか?ただし全国1万1000院の動物病院のうち、処方しているのはわずか800院ほど。眼の治療は眼科専門の動物病院へ紹介されることが多いからでしょう。
「処方されているコンタクトレンズの中には、人用の度なしコンタクトレンズを使っている例もあるようです。わんタクトは動物に合わせたサイズ展開で先生方の処方のしやすさを第一に考えつつ、安心してご使用いただけるように人用のシードPureシリーズと同じ素材を使用しています」(大津さん)
「耐汚染性に優れている両性イオン素材『SIB』やUVカット機能などが特徴ですね。実はパッケージにもこだわっているんですよ。飼い主が見る機会は少ないかもしれませんが、少しでも不安を和らげることができたら、とかわいいデザインにしました」(梶原さん)
いずれは猫用やウサギ用のコンタクトレンズも?
わんタクトは犬用ですが、獣医師からは「猫やウサギにも使えるのか」という問い合わせもあるそうです。「にゃんタクト」や「ぴょんタクト」の開発を期待しちゃいますね。
「実は社内でも猫用を作りたいという声が上がっているんです。まだ製品ができていないのに『にゃんタクト』という名前だけは浸透しています(笑)」(金澤さん)
「ウサギも頚椎などの損傷でまばたきができなくなることがあるそうなので、できたらいいですね。まずはわんタクトのサイズ展開からですが、今後も種類を増やしていきたいと思っています」(梶原さん)
ペットの医療は獣医師と飼い主による病気やけがの治療が中心です。今後もシードのような企業が参入すれば、新たな発展の道が開けそうですね。
「私たち企業の技術を動物のQOLの向上に役立てることができればうれしく思います。先ほどのご説明したあにまるすまいるには、動物医療関係者に加えてペット分野に参入していない企業も加盟しています。技術をどのように生かしていくか、飼い主と獣医師とコミュニケーションを密に図り、医療の発展の一端を担っていきたいと思います」(金澤さん)
今回はペットの眼に着目したシードに取材しました。わんタクトを通して今後の動物医療の未来が見えてきた気がします!
※画像はいずれもシード提供。「犬から見た景色」は筆者作成のイメージ。