2024.7.15
加害者と距離をとる【逃げる技術!第19回】避難、引っ越し、昼逃げ……
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女性のフリーランスでは賃貸の部屋を借りにくい
その間もずっと、実はホテル住まいの後半から、家探しはしていたのです。ただ、家賃の負担もさることながら、入居審査がネックでした。一度は夫の名義で書類を出してみましたが、それは当然通ったものの、夫本人に重要事項説明をしないと契約できないということで(よく考えたら当然なのですが)あきらめました。
わたし単独の名義で審査に出すと、フリーランスの方は厳しいですといわれてなかなか通りませんでした。
いよいよ、児相からも「お母さん、いつ家を出るんですか?」とせっつかれます。そしてそのころ、夫ともみあってケガをして警察を呼ぶと、逆にわたしを「刑事告訴する!」といってなぜか彼がパトカーに乗って警察署へいってしまうというイベントが発生しました(第13回参照)。
ただ、ちょうどその頃、探していたエリアで外国人もOKの新築マンションが建ったのです。少し家賃は高いのですが、運よくそこに入居することができました。
職業、性別、所得、国籍、高齢などさまざまな条件で賃貸物件の入居審査が厳しくなりやすい。そのような人にも入りやすい物件を扱う不動産屋もあるが、敷金礼金が高かったりと一長一短。都市部では公営住宅は抽選倍率も厳しく、すまいの問題はネックになりやすい。
引っ越しはプロに依頼、友人知人にも手伝ってもらう
新居はもとの家と比べれば、実際の床面積で1/4ほどの小さなすまいです。引越し日を決めると、すぐに引越し屋を手配しました。普通に大手の引越し屋で、土曜日の昼間に予約をしました。
引越しの荷物はバレてはいけないので、直前まで荷造りはしませんでした。また新居にはたいしてものが入らないのでダンボールで10箱だけ、あとは3つ折りのふとんマットレスと、寝具一式くらいです。ダンボール箱の中身は、半分が子どもたちの本になりました。もう半分は、食器類、洗面具、学用品などです。
子どもたちの読書習慣と習い事はつづけたいと思ったので、場所はとりますが本棚と電子ピアノは運びました。
引っ越しの前日には荷詰めで友人1名に4〜5時間手伝ってもらい、当日には、友人知人3名(子どもたちを外に連れ出して時間をつぶしてもらう人1名に3時間、片づけの手伝い1名に6時間、用心棒で男性1名に4時間ほど)に手伝ってもらいました。
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引っ越し業者の費用は、短距離で単身扱いだったこともあり、4万円程度でした。2〜3月の繁忙期でなかったのもよかったと思います。ものの搬出・搬入は3時間強で終わりました。
引っ越しはプロに依頼。最近は昼逃げコースを用意する引っ越し会社も。身の安全と作業スピードのために、知人友人にも思い切って頼りましょう。管理会社への引越し日の通知や、電気・ガス・水道などの開始連絡も忘れずに。
こういう引っ越しはひとりだと心がくじけそうになるので、なるべくいろんな人に話して助けてもらうほうがよいと思います。
万が一、夫とはちあわせして危ないことになっては困るので、事前に地元警察の生活安全課にも連絡をし、「以前から相談していたDVが理由で○月○日○時頃に引っ越します。万が一トラブルがあったときには110番させていただくかもしれません」と伝えました。
多少のアクシデントはあったものの、友人たちのおかげで無事に引っ越しは終わりました。そしてその夜から、新居での生活が始まりました。本当に狭いお風呂、狭いトイレ、廊下と呼べないほどの法定の幅ギリギリの廊下、狭いキッチンです。部屋の幅も狭いので、お布団を敷くにも蹴ってぎゅうぎゅう踏まないと敷き込めません。
それでも、怒鳴ってくるかもしれない人間、叩いてくるかもしれない人間、何をしてもつまらない顔を向けてけなしてくる人間が「いない」というのはとてもすばらしいことでした。
母子3人の暮らしが始まっても、2ヶ月ほどは玄関や廊下で物音がするとビクッとする日々が続きました。「父親に見つかったのでは。追いかけてきたのでは」と思って子どもたちはわたしにしがみつきました。でも1年がたったいま、ふたりはもう何者をも恐れてはいません。
DVから逃げる引っ越しの場合は、地元警察の生活安全課にあらかじめ共有しておく。
次回は、「調停を始める」ということについて書きたいと思います。
当連載は毎月第1、第3月曜更新です。次回は8月5日(月)公開予定です。
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