よみタイ

私たちは癒されたい ~「女風」に通う女たち~

ブラック企業の人間関係に疲れ果て……40代女性が女性用風俗にすがった切実な理由

 女風のセラピストは各自がTwitterのアカウントを持ち、積極的に発信している。そして一部の店舗を除いては集客のための営業ツールとして、誰でもDMを送ることができる。
 仕事の悩み相談で女風!? と思わず突っ込みを入れたくなるが、セラピストが女性の悩み相談に乗ることは、実はよくある。裸の付き合いだからこそ、性的なことや仕事の悩みなど、本音で話せる面があるのだろう。実際カウンセラー的な役割を担っているセラピストも多かったりする。
 とにもかくにも、里美さんはネットで検索して、年も近く人生経験の豊富そうなセラピストにTwitterのDMで悩みを打ち明けた。そんな相談に親身に乗ってくれたのが、今指名しているセラピストだ。
 セラピストとのやりとりで目から鱗が落ちたのは「辛かったら逃げてもいい」というアドバイスだ。

「私、これまで仕事に対して逃げるっていう発想がなかったんですよ。会社を辞めるのは、逃げだと思ってたんです。だけどセラピストさんはずっと『逃げろ』って言ってました。『人生は長いんだから、逃げてもいい』って。逃げるのは人生を立て直すことだよって。そうかもしれないって思うようになりました。そして、やりとりを重ねていくうちに、この人は心の底から信頼できるって思ったんです」

 どんなことがあってもセラピストだけは私の味方でいてくれる、里美さんはいつしかそう思うようになっていった。

初めてのデートは牛丼チェーン

 初めてセラピストに会ったのは一年前のことだ。里美さんの仕事は多忙を極める。しかも地方在住の里美さんは、セラピストに会うには高速バスに数時間揺られなければならない。忙しい仕事の合間を縫って、休日の夜に二時間だけ会うことになった。

「相談に乗ってもらった御礼がしたかったんです。その日はデパートで食事する予定だったんですが、コロナ禍でまん防(まん延防止等重点措置)だから、待ち合わせた時間にはお店が次々と閉まっていくんです。だから牛丼チェーンに入ったんですよ」
「え? 牛丼屋?」

 私は、思わず目を丸くしてしまう。里美さんはいたずらっ子っぽい眼差しで「はい、牛丼チェーンです」とにっこりと笑う。里美さんにとってセラピストとの初めてのデートは、感染症防止のパーテーションで個別に区切られた空間だった。初めての女風がオシャレなレストランやラブホテルでもなく、牛丼チェーン――。しかもその後はドライブしただけで、エッチなことは皆無。
 やはり里美さんの話は「一風」変わっている。だけど面白体験を話す里美さんの表情は明るく、幸せそうだ。そんな話に耳を澄ませていると、どこかほっこりさせられるのはなぜなのだろうか。私はその答えが知りたかった。
 二回目の逢瀬では、セラピストの希望でラブホテルに入った。すでにセラピストとはDMのやりとりで信頼関係が築かれていたため、抵抗感はなかった。

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菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

Twitter @ujimushipro

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