2021.8.14
「子どもは作らないんですか?」 妻を襲うSNSの刃に、“ママ”との格差…逃れられない女の苦しみ(第15話 妻:麻美)
仕事も恋人も手に入れた。貪欲な妻の情事
慌ただしい日々の合間を縫って、麻布十番の彼の部屋に忍び込むのはすでに麻美の日常となっている。
「ねぇ、見て」
胸元までシーツを引き寄せると、床に転がり落ちたスマホを拾い上げ、晋也にその画面を見せた。
そこにはデザイナーから送られてきたエステサロンの内装のイメージ画像が並んでいる。
「うわ、すっごいオシャレじゃん。麻美って経営の才能まであるのか」
麻美の身体を組み伏せるように上半身を起こした晋也が素直な反応を見せると、胸に満足感が広がる。
康介から1,000万円援助させたとはいえ、決して潤沢とは言えない予算で短期間で必死に作り上げたデザイン。最近流行りのシンプルでスタイリッシュなものではなく、以前パリで訪れた5つ星ホテルのラウンジのような、モダンなロココ調をイメージした。
完成まで急げば2ヶ月ほど。他の諸々の準備も猛スピードで進めるつもりだ。そして必ず、理想の店を手に入れる。
「こんなに美人で、自分の店まで持って……麻美に憧れてる女って、ものすごい数がいるんだろうな」
晋也が身体に覆いかぶさる。そして彼は少し冷めたような視線で麻美を見下ろして言った。
たしかに最近、麻美のインスタグラムのフォロワー数は勢いを増してますます伸びている。エステサロン開業の情報解禁をすると多くの反応があったし、女性誌の編集者からも取材をしたいとの連絡があった。晋也が言うように、なぜだか今、自分は世間の注目を浴びやすい立ち位置にいるのだと思う。
「……麻美のこと犯したいと思ってる男も多いだろうな……こんなにヤバい不良妻とは知らずに」
すると晋也は突然、麻美の両手首を強く抑えつけた。スマホが手から滑り落ちる。
「でも、麻美は俺のものだよな?それとも実は旦那ともこんなことしてるの?」
近頃、晋也はベッドの上で少々荒々しく麻美を扱うことがある。けれど普段は女の下手に出るタイプの男がこうした一面を見せるのが、麻美は嫌いではない。
少なくとも、夫の康介にはとてもできない芸当だ。
「……こんなこと、晋也くんとしかしません」
彼に合わせて恥じらいながらそう答えれば、あとは身を任せるだけ。
じゃあずっとここにいなよ、と言う晋也の低い声が甘く全身に広がった。