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解放感たっぷり! だけど気軽に気を抜いては楽しめない!? 日本最奥の秘湯「北アルプス高天原温泉」【山の名&珍プレイス 第2回後編】

登山といえば、目的地はやはり山頂? いや、山頂以外にも目指すべきおもしろい場所はたくさんあるのです! それは、怪奇現象が起きる不思議な場所だったり、ユニークな逸話がある名所だったり、見たこともない大木や不思議な形をした巨岩だったり……。
本連載では、アウトドア雑誌や山登りの指南本、TV番組や各種イベント出演でもおなじみの山岳ライター・高橋庄太郎が、豊富な山経験をもとに、自分の足でわざわざ見に行く価値がある、こだわりの山の名スポット・珍スポットを紹介していきます。

交通網が発達した現代だからこそ、大きなロマンや価値が感じられる「歩いてしか行けない」秘湯中の秘湯、北アルプス高天原温泉。
自分の足だけで往復46.7km、歩行時間26時間超えのこの秘湯、その歩いて、歩き続ける”行き方”をお届けした前編に続いて、後編では、その入り心地などを解説します。

バナー・本文写真/著者提供

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モリブデン鉱山の職人も体を癒した歴史ある温泉

 登山口を出発し、2日目にやっと到着した高天原温泉。北アルプスのど真ん中の標高2054m地点にあるというのに、明るく開放的な空間には驚かされるかもしれない。ここはもともとこの付近で1950年代までモリブデンを採掘していた大東鉱山の職人たちが発見し、利用していた温泉だ。僕は未確認だが、高天原山荘から高天原温泉に向かう途中、右側(山側)の小さな沢を上がっていくと、当時の採掘場所が見つけられるらしい。

 高天原温泉自体は、その名も「温泉沢」を挟んで両岸に露天風呂が設置されている。高天原山荘では「からまつの湯」と呼んでいるようだが、この周辺にほかの温泉があるわけではなく、一般的にはここが「高天原温泉」で通用する。

両岸に露天風呂がある温泉沢。沢を渡るようにつけられた黒い線状のものは、湯温を調整するために冷たい沢水を導水するためのホースだ
両岸に露天風呂がある温泉沢。沢を渡るようにつけられた黒い線状のものは、湯温を調整するために冷たい沢水を導水するためのホースだ

 右岸(水が流れていく方向を見て右側)には脱衣場に屋根をかけた小屋風の人工物が2カ所。上流側が女性専用だが、下流側は男性用とされてはいないので、名目上は混浴だ(もちろん実際にはほぼ男性用)。そして左岸には、脱衣場も覆いもない完全な露天風呂。2~3人は入れるサイズ感でここも混浴扱いだが、これまで10回近く高天原温泉に入ったことがある僕も女性が入っているのは見たことがない。安全面では推奨できないものの、女性が人目を気にせずに入れるのは夜だけだろう。

露天風呂近くの道標。男性は間違っても女性専用風呂には入らないように!
露天風呂近くの道標。男性は間違っても女性専用風呂には入らないように!
右岸の混浴露天風呂を外側から。湯船からあふれた温泉は積み上げた石の壁伝いに沢へ流れ出していた
右岸の混浴露天風呂を外側から。湯船からあふれた温泉は積み上げた石の壁伝いに沢へ流れ出していた
以前、某山雑誌の取材で訪れた際の1カット。朝の掃除を兼ねて、小屋のスタッフのみなさんも温泉を楽しんでいた
以前、某山雑誌の取材で訪れた際の1カット。朝の掃除を兼ねて、小屋のスタッフのみなさんも温泉を楽しんでいた

解放感たっぷり! だけど気軽に気を抜いては楽しめない!?

 女性に比べれば、男性は左岸の露天風呂も楽しみやすい。だが、気を抜いて湯船の脇に座っていたり、お湯から出て体を拭いているようなときに女性が到着したり、女性専用露天風呂から外に出てきたりすると、大いに慌てることになる。また、人がいないタイミングを狙って、裸のまま右岸から左岸、左岸から右岸にわたって両方の露天風呂を楽しむ人もいるが、これは非常に危険だ! 隠しておきたい場所を見られるだけならまだしも、裸足で岩の上や木の橋を慌てて渡ろうとするのは怪我のもとだ。とはいえ、すぐ目の前にある2つの温泉に入るために、いちいち体を拭いて服を着るのは面倒で……。現場での判断は各自にお任せするしかないが、とにかくご注意を!

こちらは女性専用の露天風呂。筆者は男性なので、内部は未見である
こちらは女性専用の露天風呂。筆者は男性なので、内部は未見である
右岸の露天風呂の方向から左岸の露天風呂を眺めたカット。双方の露天風呂の距離は15mほどだろうか
右岸の露天風呂の方向から左岸の露天風呂を眺めたカット。双方の露天風呂の距離は15mほどだろうか
両岸の露天風呂は簡素な橋で結ばれている。雨天時は渡ることができないほど増水することもあるので、無理は禁物だ
両岸の露天風呂は簡素な橋で結ばれている。雨天時は渡ることができないほど増水することもあるので、無理は禁物だ
左岸の露天風呂がこちら。湯が白濁しているので湯船に入ってしまえば、周囲から丸見えでも安心だ
左岸の露天風呂がこちら。湯が白濁しているので湯船に入ってしまえば、周囲から丸見えでも安心だ
裸で橋を渡る人は男性登山者。こんなときに女性登山者がここに到着したら一大事だ!
裸で橋を渡る人は男性登山者。こんなときに女性登山者がここに到着したら一大事だ!

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高橋庄太郎

たかはし・しょうたろう
山岳/アウトドアライター。1970年宮城県仙台市生まれ。高校の山岳部で山歩きを始め、出版社勤務後の2年間の無職時代には国内外のアウトドア旅へ。その後フリーランスのライターとなり、ウェブメディアや雑誌を中心に執筆活動を続けている。近年はイベントやテレビへの出演も多く、アウトドアギアのプロデュースも手掛けている。著書に『テント泊登山の基本テクニック』(山と渓谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)、共著に『“無人地帯”の遊び方』(グラフィック社)など多数。

Instagram: @shotarotakahashi
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