2026.1.4
“自分の足”だけで往復46.7㎞、標高差3803m、歩行26時間54分! これぞ日本の秘湯中の秘湯「北アルプス高天原温泉」【山の名&珍プレイス 第2回前編】
本連載では、アウトドア雑誌や山登りの指南本、TV番組や各種イベント出演でもおなじみの山岳ライター・高橋庄太郎が、豊富な山経験をもとに、自分の足でわざわざ見に行く価値がある、こだわりの山の名スポット・珍スポットを紹介していきます。
交通網が発達した現代において、「歩いてしか行けない」場所は、もはや山奥ばかり。時間がかかり、少々疲れはするとしても、「歩いてしか行けない」だけでも大きなロマンや価値が感じられるというのに、それが大自然のなかの「秘湯」だったら? 前回の心霊スポットに続き、今回紹介するのは、最低でも3泊4日はかかるという「日本最奥」北アルプスの秘湯。前編と後編に分けてお届けします。
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どこから向かっても、はるかに遠い……。巨大山脈のど真ん中

火山大国の日本において、登山にまつわるお楽しみのひとつが、行きかえりに楽しめる「温泉」だ。公共交通機関やクルマでアプローチできる登山口付近には温泉が多く、下山後に体を清め、心身をリラックスさせてから帰宅したいという方は多いだろう。お好きな方は入山前にも堪能しているかもしれない。
一方で、「歩いてしか行けない」温泉も日本全国に点在している。とくに多いのが、長野・富山・岐阜・新潟県にまたがる北アルプス。その多くは日帰りか1泊で入りに行けるのだが、なかにはわざわざ“そこに入りに行く”ために、入念な計画を立てなければ遭難しかねない場所も残されている。そんな “大秘境”に位置するのが、「高天原温泉」(富山県)だ。その昔、ゴールドラッシュを夢見て金鉱探しの山師が分け入り、一時は実際にモリブデン鉱石を採掘。すでに絶滅した二ホンカワウソが最後まで目撃されていたという伝説も残っているユニークな場所で、登山道が発達した今日でも、最低3泊4日の予定を組まなければならないほどの山奥である。
それしても、とにかく遠い。なにしろ、どの登山口からでも高天原温泉に到着するまでに通常は1泊以上かかるのだ。また、登山口を早朝に出ようとすると、出発前日に登山口付近まで到着しておかねばならず、登山口付近でのいわゆる“前日泊”も必要となる。だから、脚力に自信がある人でも3泊4日はかかってしまい、人によっては4泊や5泊を見ておかねばならないのだ。もちろん歩くペースは人によって異なり、トレイルランニングのようなスタイルであれば、往復1泊ですむ可能性がないわけではない。しかし一般的な登山者には、やはり家を出てから最低3泊が現実的なのである。
高天原温泉は北アルプス中央南部。山奥過ぎてどの登山口からも遠いが、体力的に、所要時間的に、そして登山道に危険な場所が少ないという点でも比較的マシなのが、登山口までのアプローチも容易な長野県側の新穂高温泉からのルートだ。観光地ゆえに他の登山口に比べてバスの便が多く、駐車場も大きいからである。


そこまでの道中も格別! そびえたつ日本の名山群
この近辺は名山だらけだ。ルート上の左右に並び立つ日本百名山だけでも、焼岳、穂高岳、笠ヶ岳、槍ヶ岳、鷲羽岳、水晶岳などがあり、黒部五郎岳、薬師岳なども至近距離。これだけで8座。乗鞍岳や立山、御嶽山などの遠望する山まで加えれば、その数は少なくても15座にはなるのだから、絶景マニアにはたまらない。

しかし繰り返すが、本当に遠いのだ! 登山地図のアプリで有名な「YAMAP」で新穂高温泉のバス停から高天原温泉までの登山計画を立てると、「新穂高温泉~三俣~岩苔乗越~高天原温泉」という最短ルートでも、一般的ペースでの歩行タイム「13時間57分」、距離「23.3㎞」、高低差は登り「2380m」、下り「1422m」と算出される。これが往復になると、歩行タイム「26時間54分」、距離「46.7㎞」、高低差は登り「3803m」、下り「3803m」だ。これだけの時間、距離、高低差を自分の足だけでこなしていくには、相当な覚悟がいることは容易に想像できよう。
新穂高温泉から高天原温泉までのルートでありがたいのは、多くの山小屋が点在していることだ。自宅を出発する時間や自分の体力に合わせて宿泊する山小屋を選ぶことができ、そこから1日当たりの行動予定や温泉でのんびりできる時間が見えてくる。とはいえ、どのような“作戦”で高天原温泉を目指すのかは説明し始めるとキリがないので、ここでは割愛させていただこう。



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