よみタイ

文化人が集うゴールデン街「マチュカバー」のママにインタビューしたら、とんでもない人生の話が聞けた

「鳩のおばちゃん来た〜!」

: なるほど~。麻知子さんは普段から昼間フラッと写真撮ってたんですか?

: うん。そうそう。

: 仕事に繋がるかもしれない、というわけでもなく?

: 全くそういうのは考えてなかった。私ちょっと変わった人間で。自分では至って普通だと思ってるけど (笑)

: 変わったってどんな?

: 当時、私、脚の悪い鳩、ポーちゃんっていうんだけど、その子を片手に持って、どこにでも行く女だったもので (笑)

: 手に鳩をもって?

: そうそう。当時、写真を撮りながら窓拭きのバイトもしてて、ある日、窓拭きの現場で巣から落ちた小鳩を見つけて。様子を見てたら、足がフニャフニャで立つ事が出来なくて、動物病院に連れて行ったら「これは生まれつきの足の麻痺です。この子なら保護してもいいんじゃない」って言われて。
それで、毎日ポーちゃん連れて公園に行ってたんだけど、よく会う子供たちからは「鳩のおばちゃん来た〜!」って喜んでもらってた (笑)

21年前。「鳩のおばちゃん」と近所の子どもたちに呼ばれていた麻知子さん
21年前。「鳩のおばちゃん」と近所の子どもたちに呼ばれていた麻知子さん

: 公園では、ポーちゃんとよく披露する芸?みたいなのがあって、私がテレビアニメの唄の『花の子ルンルン』を「ルルルン♪ ルン♪ ルン♪」って首を振りながら歌うと、ポーちゃんが私の真似して同じポイントで首動かしてテンポとってくれたり、私が合図したらポーちゃんが首で踊ったり。いろいろなパターンがあって。子供たちと一緒に歌を歌って合唱したり。それを見ていた屋台の焼き芋のおっちゃんが、お芋くれたりとか (笑)

: すごい話ですね (笑)

: うん。子供の時から、大阪の実家は怪我した鳩がよく来る家だったの。たぶん、近所の鳩の間で「怪我したらあの家に行ったらなんとかしてくれるで」ってなってて。実家にたまに帰ったら、怪我した野鳥が家の中を飛んでた時もあって、あれにはさすがにビックリしたけど。まぁだから鳥には免疫あったから (笑) 父親は家に来た怪我した鳩の傷口を消毒だけして、治るまで餌をあげて、完治したら自然に返すのを繰り返してた。
多分合計で18羽くらいいたと思う。もっといたかもだけど。鳩だけじゃなくヒヨドリとかいろいろ。面白いのが、怪我が治った鳥をベランダから飛ばすんだけど、どの鳥も、すぐに逃げるんじゃなくて空の上で3〜4回、小さい円を描いて回ってから飛んでった。その瞬間が凄い好きだったわ。

飛び立つ前の13代目の鳩と麻知子さんの父の写真。撮影は麻知子さん
飛び立つ前の13代目の鳩と麻知子さんの父の写真。撮影は麻知子さん

: へぇ~。鳥もちゃんとお礼してくれるんですね。すごい。ポーちゃんはずっと歩けなかったんですか?

: うん、歩けなかった。でも、羽は大丈夫だったので、よく手から飛ばしてあげてた。飛びたいだけ飛んだら、帰ってくる。それを私がキャッチして。

: 戻ってくるんですね。

: そうそうそう。犬みたいな。めっちゃくちゃ可愛かった。だからどこにでも連れて行ってた。新幹線も一緒に乗ってたし。フランス料理とかも。膝の上にポーちゃん置いて寝かしてた(笑)

: 鳩OKな店とかあるんですね (笑)

:あ、ポーちゃん用の気持ちいい寝袋を作って、ポーちゃんもその袋が好きで中に入ったらすぐに寝てたから。一応許可はもらって。前例がないからびっくりされてたけども (笑)

: そのころ、麻知子さん東京で1人暮らししてたんですか?

: うん。

: ポーちゃんも一緒に住んでたんですか?

: 一緒一緒。その間に、元旦那と出会って、結婚して。

: すごいなぁ。

1 2 3 4 5 6 7

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Facebookアカウント
  • よみタイX公式アカウント

新刊紹介

山下素童

1992年生まれ。現在は無職。著書に『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』『彼女が僕としたセックスは動画の中と完全に同じだった』。

Twitter@sirotodotei

週間ランキング 今読まれているホットな記事

  1. 「神戸大学以上の学歴の女性」としか結婚しないと決めた東大文一原理主義者【凹沢みなみ×『学歴狂の詩』紹介マンガ】

  2. 伊藤弘了「感想迷子のための映画入門」

    岩井俊二『Love Letter』のヒロインが一人二役である理由 ――あるいは「そっくり」であることの甘美な残酷さ

  3. 「学歴」というフィルターで世界を認識する狂人たち【小川哲×佐川恭一 学歴対談・前編】

  4. 新刊 : 佐川恭一
    笑いと狂気の学歴ノンフィクション

    学歴狂の詩

  5. 灘中高→4浪で東京都立大のナツ・ミートが『学歴狂の詩』を読み解く

  6. 小説家デビューは「受験勉強」で攻略できるのか?【小川哲×佐川恭一 学歴対談・後編】

  7. 佐川恭一「学歴狂の詩」

    「田舎の神童」の作り方【学歴狂の詩 無料公開中!】

  8. 佐川恭一「学歴狂の詩」

    「阪大みたいなもん、俺は三位で受かるっちゅうことや!」マウント気質が強い〈非リア王〉遠藤【学歴狂の詩 試し読み】

  9. 佐川恭一「学歴狂の詩」

    天才・濱慎平がつぶやいた「こんなんもう手の運動やん……」【学歴狂の詩 試し読み】

  10. 稲田俊輔「西の味、東の味。」

    武田信玄の野望を叶えた信州味噌

  1. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    女性用風俗に通う女性たちの心のうちを描くコミック新連載【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第1話前編】

  2. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    同僚の先生に嫌われるのが怖かった教頭の決意【白兎先生は働かない 第14話】

  3. 野原広子「もう一度、君の声が聞けたなら」

    妻が逝った。オレ、もう笑えないかもしれない 第1話 さよなら、タマちゃん

  4. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    同世代の男にはもう懲りたと思っていたけど、新人セラピストの彼に出会って…【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第1話後編】

  5. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    普段は厳しい女性上司を演じているけど……SM専門女性用風俗で見つけた「本当の私」【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第4話】

  6. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    「どうして管理職になってしまったんだろう」教頭先生の苦悩【白兎先生は働かない 第13話】

  7. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    30代独身女性が女風を利用して気づいた「一番大切にするべきなのは…」【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第2話後編】

  8. しろやぎ秋吾「白兎先生は働かない」

    絶対に定時で帰る中学校教師……その驚きの理由とは? 第1話 部活にはいきません

  9. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    容姿も仕事も平均以下……劣等感に苦しむ私が女風セラピストの〝沼〟にはまるまで【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第2話前編】

  10. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    レスと離婚……私はまだ〝女〟なの? それを確かめたくて女風へ【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第3話】