よみタイ

「標準治療」とは、お安くできるスタンダードクラスの治療、の意味ではないらしい

 続いてOさん、Tさんからも返信が来る。久坂部さん同様、リストにある病院四つについては、どこも実績があり安心である旨が書かれている。Oさんは希望するなら知り合いの外科医を紹介するとも言ってくれた。
 
 がんのような病気では、さまざまな事情や思惑から家族以外には伏せるケースも多い。だが、今回、私は彼らだけでなく周囲に積極的に事情を話すことで親身なアドヴァイスや貴重な情報をたくさんいただいた。普段はただの宴会好き飲んべえ野郎、女好きチャラ男、口の悪いお局つぼね、派手派手美魔女、そんな彼、彼女たちの誠実さと人を思いやる気持ち、思慮深さをあらためて知らされ、感謝することとなった。同時に友人知人が同じような状態になったときに、どんな受け答えをし、どんな形で手を差し伸べ関わればいいのかを教えられた。
 
 ちなみに小説教室以来、三十年来の付き合いの小説家鈴木輝一郎に至っては、「おー、せっちゃん、再建するなら俺の腹の脂肪やろうか?」
 いらんわ、そんなもん! 

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新刊紹介

篠田節子

しのだ・せつこ●1955年東京都生まれ。作家。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
97年『ゴサインタン』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。『聖域』『夏の災厄』『廃院のミカエル』『長女たち』など著書多数。
撮影:露木聡子

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