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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

保守王国・富山県知事選挙は新人候補の大逆転劇! 選挙取材のプロが「新田陣営で開票待ち」をした理由

最終日に公明党本部で街頭演説を行なった石井氏。聴衆は誰もいない……。(撮影/畠山理仁)
最終日に公明党本部で街頭演説を行なった石井氏。聴衆は誰もいない……。(撮影/畠山理仁)

新田陣営で開票待ちをした理由

 私は選挙戦最終日の10月24日(土曜日)早朝に富山入りした。23日夜にトークイベントがあり、それを終えてから深夜バスで富山に向かったのだ。料金は3700円。
 土曜日の早朝から3陣営の活動を見てきたが、明らかに勢いに差があった。率直に言えば、新田陣営に一番活気があった。
 土曜日の朝イチで石井氏の事務所を訪ねると、自民党富山県連幹事長の五十嵐務富山県議が対応してくれた。情勢をどう見ているかと私が聞くと、「横一線の戦い」と非常に重苦しい雰囲気で一言しか発しなかった。

 私はいつも一人で全候補者を取材をする。だから複数の候補がいる場合、投票締め切り時間の日曜20時をどこで迎えるかで悩む。それは「当確の瞬間」を記録したいからだ。
 場所の選定を誤ると、大切な瞬間を逃してしまう。しかも、選挙は最後までなにがあるかわからない。だから毎回、最初にどこの事務所に行くかが大きな賭けになる。
 しかし、今回は最終日に各陣営の活動を見終えたところで、悩まず新田事務所に行くことを決めた。完全に事務所の雰囲気が違った。「勝つ雰囲気の事務所」というのは間違いなくあるのだ。

 3陣営の事務所は告示日にも訪ねているが、選挙戦最終日の石井事務所の雰囲気はあきらかに硬かった。かわぶち事務所は平常運行だった。そして、新田事務所は人の出入りが激しく活気にあふれていた。事務所を訪問し、街頭演説を見ていると、情勢が肌感覚でわかる。
 たとえば、石井氏は最終日に公明党本部で街頭演説を行なっている。この時、公明党富山県本部代表の吉田勉県議が応援演説をしていたが、聴衆が誰もいないことに私は驚いた。公明党が絡んでいる選挙で、聴衆ゼロは非常に珍しいからだ。
 石井氏は通り過ぎる車に向かって演説をしていたが、公明党は石井氏の街宣車を安全に停めるための駐車場を貸しただけのようにも見えた。公明党は県議会で1議席、富山市議会では4議席。それなのに聴衆が一人もいないのはあまりにも寂しい。走り去る車に向かって演説する石井氏は、どんな気持ちだったのだろうか。

 その日の夜19時。石井陣営が富山市内の環水公園野外劇場で開いた結束集会も見に行った。野外劇場だから、舞台としては絵になると思って行った。応援弁士に今井絵理子参議院議員が駆けつけるとも聞いていた。
 しかし、現地を訪ねると200人ほどしか集まっていなかった。しかも、会場は人通りが少ない夜の公園だ。たまたま通りがかる人はだれもいない。駅からも遠いため、知り合いだけが集まっている感じだ。運動の広がりをまったく感じさせない。なぜこの場所を選んだのか、まったく理解に苦しんだ。いや、選挙じゃなければとっても良いロケーションなんだけれど……。

 一方、新田氏の最終演説は富山駅前の商業施設「CiC(シック)」前の広場で行われた。こちらは主催者発表で500人が参加した。見た目の感覚でも、石井氏の結束集会より多くの人が集まっている。こちらの応援弁士には、馳浩衆議院議員もやってきた。ちなみに前日の金曜日には森喜朗元首相が新田氏の個人演説会で応援演説をしていた。
 新田陣営の支援者は、手に青い風船や「新田」と書かれた青い名札のような証紙ビラを持って振っていた。動きが出ることで人数が1.5倍増しに見える。
 駅前だから、全く関係ない人も通りがかる。そうすると、集会参加者の数はより多く見える。すべての人がじっとしているわけではないから、聴衆に動きが出てライブ感も出る。
 最終演説の舞台設定は、明らかに新田陣営が勝っていた。

石井陣営には応援に今井絵理子参議院議員が駆けつけたが。(撮影/畠山理仁)
石井陣営には応援に今井絵理子参議院議員が駆けつけたが。(撮影/畠山理仁)
新田氏の演説を待ち構える支援者。青い風船や「新田」と書かれた青い札を持ち盛り上げる。(撮影/畠山理仁)
新田氏の演説を待ち構える支援者。青い風船や「新田」と書かれた青い札を持ち盛り上げる。(撮影/畠山理仁)
かわぶち映子氏のグランドプラザ前での演説。長時間にわたったため、かわぶち陣営の後に演説する予定だった石井陣営は演説をあきらめて次の場所へ移動した。(撮影/畠山理仁)
かわぶち映子氏のグランドプラザ前での演説。長時間にわたったため、かわぶち陣営の後に演説する予定だった石井陣営は演説をあきらめて次の場所へ移動した。(撮影/畠山理仁)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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