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家事育児。「感謝」で心は満たされても、お腹は膨らまない

「真剣」に家事育児をやっても0円

「うわー。やっぱり子供が小さいときは、専業主婦の方がいいじゃないですかー」
 そりゃ、そうなのである。子供が小さいときというのは、何が起きるかわからんので対応できる環境をつくっておく必要がある。常に家に誰かがいるというのは盤石だろう。
 また、小さいときは意外とお金もかからないものである。医療費も無料であるし、特段、高尚な習い事などさせない限り、夫の収入だけでやっていけることも多い。だから、妻は働く必要がなかったりする。
 そして、働かないから暇というわけではなく、家事育児を徹底してやりはじめれば、それはもう大変な重労働である。

 私なんて洗濯物は基本的に乾燥機だし、たたまない。どうせすぐ着るし、たたまなくても死なないし。という人間だが、乾燥機を使わず、干して、たたんで、しまうという工程を毎日行っていれば、それだけでも面倒なことである。さすがの私も、娘が生まれたての時は、大人と子供の洗剤を替えて、別に洗濯したりしていたのでそこらへんの共感はできるのである。

 だから、家事育児は「真剣」にやれば、ものすごく時間がかかるもので大変なものであることがわかる。「真剣」にやれば。
 定期的にTwitterなどでお見掛けするのが、「家事育児を賃金換算したら〇〇百万円!」というもの。私はこの手の記事を見るたびにいつも不思議な気持ちを抱く。特に、会社勤め経験がありお給料をもらっていた人からすると、時間=お金と考え、家事育児を賃金換算したくなる気持ちはわからなくもない。
 しかしいつも思う。
「換算したところで、実際にお金がもらえるわけではないのに、なぜ換算するのだろうか」
 仮に、「家事育児は賃金換算すると日当一万円です。ただちに払いなさい」となっても、それを夫からもらったところで、家庭内でお金が循環するだけで、家庭自体の収入が増えるわけではない。
 賃金換算は、それだけ家事育児が大変なんだよと社会に訴えるためのものなのだろうが、家事担当者からすれば、むしろ妄想するだけ悲しくなるだけではないか。
「真剣」に家事育児をやっても0円。「ずぼら」な家事育児をしながら働き続けている私が、お金をもらえている。
 あ、もちろん家事育児はずぼらだが、外で働いているときは「真剣」である。お金がもらえることを「真剣」にやっているのだ。そして、外で働くことが決して、楽であるということではない。
 私は打算的な人間であるため、お金がもらえることは一生懸命やる主義である。だから、家の外での仕事はきちんとやる。家のことが杜撰でも、家の外ではきちんとしているから、家庭が崩壊しても、夫の収入がなくなっても、稼ぐすべはある。
 家事育児賃金論争では、「家事育児はこんなに大変なんだ」という話になるが、同じように「社会で仕事をすることはこんなに大変なんだ」とも言えるわけである。どちらが大変か争っても仕方ないことで、どちらも大変なんだけれども事実は一つ。
 仕事はお金をもらえ、家事育児は無報酬。
 ただ、それだけなのである。
 いくら大変アピールをしたり、換算したところで無報酬なのである。

 そして、「家事育児賃金換算」を訴える方の多くは、大変さを家族に認めてもらえてないのではないか。仮に「いつもありがとう」と感謝を述べられていたら、換算論争などふっかけないのではないか。
 いやしかし、「感謝」で心は満たされても、お腹は膨らまない。
 もらえないお金を夢想するのではなく、現実を見ていこうということで、以下次章をお読みいただきたい。

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田村麻美

たむら・まみ●1984年埼玉県生まれ。立教大学経済学部卒業後、同大学院で経済学研究科博士課程前期課程修了。2015年に東京都足立区にTRYビジネスソリューションズ株式会社を設立し、税理士として活躍中。夫と娘の3人家族。自身の顔写真をカバーにしたデビュー作『ブスのマーケティング戦略』(文響社) は、「ブスが幸せな結婚&ビジネスでの成功」を叶えるための戦略を論じた画期的なエッセイ。刊行直後から話題となりロングセラーとなっている。「ブス」という現実に向き合い、あきらめず、粘り強く努力を続けた経験から、「がんばるブスたちが輝く日本をつくりたい」という骨太のライフワークを実践中。
『ブスのマーケティング戦略』は、集英社文庫から好評発売中。

田村麻美HP
http://tamuramami.com/

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