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稲田ズイキ「罰当たりなほどにユルくてポップな仏教トーク」

サラリーマンの人生には仏教の「四苦=生老病死」がフルコンプされてた

働きゃ誰もが秒で病人=「病苦」

とはいえ、ストイックに働き続けたとしても、待っているものはさらなる「苦」である。映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』ばりに、これでもかな展開なのだ。
ある日突然会社に来なくなる同期。「実家に帰ります」と言ったきり、1年間帰ってきていない先輩。そんな自分の机の上を見てみると、たったの1週間で20本近くのエナジードリンク(サラリーマンの合法ドラッグ)が……。仕事で鬱になった人、仕事のしすぎでワーカホリックになった人、いつだって会社は「病」と隣り合わせである。

四苦の3つ目が「病苦」。つまり、

ブッダ「人は絶対にいつかは病気になるよ」

ということ。いつどこでどんな病気にかかるかは誰にも予測できない。年齢とともに人の免疫は落ちるし、明日風邪をひいていない確率が100%だなんて言い切れる人は誰もいない。

どれだけ仕事を頑張ったからといって、誰もが評価されるわけではなく、過度の業務は時として病という大きなリスクを生む。
仕事が生きがいの人だって、思わぬ病気で仕事を続けられなくなることだってある。

思い通りにならないとはまさにこのこと。どんなに健康診断を真面目に受けていたって、誰もが何かしらの病苦から逃れることはできないのだ。

100パー死ぬんで、そこんとこよろ「死苦」!

毎朝満員電車に乗り、仕事中も劣等感にさいなまれながら、それでも耐えに耐えて業務をこなし続ける。そんな日々を過ごす中、ふと、家で一人『情熱大陸』を見ながらYシャツにアイロンを当てて思うことがある。

「俺、一生このまま働き続けて死ぬのかな……」

まだ行けてない国だっていっぱいあるし、CDデビューもしてないし、何も成し遂げられていないのに。いやだ!このまま死にたくない!俺だって、いつかは情熱大陸に出て……

ブッダ「人はいつか死ぬからね」

有無を言わさぬ、これこそが仏教が説く四苦の4つ目、「死苦」である。つまり、人は誰もが死ぬことから逃れられないということ。どれだけ志半ばであろうと、TSUTAYAのビデオを借りたままであろうと、人は死ぬ。それは誰もが生まれ持ってきた最期の結論である。

会社での労働に命を燃やしていたサラリーマンは、定年を迎えた後にすぐに亡くなってしまうことも多いと聞く。そば打ちも家庭菜園も世界一周旅行も熟年離婚も、定年後のイベントを誰もが経験できるわけじゃないのだ。

ブッダ「思い通りにならないことがデフォなんだよね」

以上、仏教が説く四苦について、サラリーマンの人生を題材に説明してきた。

つらみがやばいとお思いだろうが、よく考えてみてほしい。これ、サラリーマンじゃなくても成立することにお気づきだろうか。学生だって、フリーランスだって、主婦だって、僧だって、それぞれの生活の中に四苦がちりばめられているのだ。それが一切皆苦、We Are The 苦!

元も子もない教えなんだと思われるかもしれないが、仏教は決して「どうせいつか誰もが死ぬんだ……」といった深夜の中二みたいな世界観ではない。ニヒルに浸らないでほしい。

「いつまでも若くいたい」そんな気持ちを持つこと自体を仏教は否定しているわけではない。若さへ執着を持ってしまい、日々老いていく自分にやきもきすることをやめなさいと言っているのだ。

心に湧いてくるモヤモヤは、思い通りにならない事象に対し「思い通りになる」と思うから生まれてしまう。仏教の「四苦」の教えは、僕らの人生には必ずどうにもならない出来事が起こり、そういったハプニングにむやみに心を費やさないよう、予防線を用意してくれているのだ。「もしああなれば、もしこうなれば」という終わらない妄想に終止符を打ち、「これは仕方ない。これでいいのだ」と自分で自分の背中を押し、目の前の現実に向き合う姿勢が説かれている。

病や老い、死からは誰もが逃げられない。「四苦」のことは、敵ではなく、人生の悪友と捉えた方がいいのだ。無理に避けようとするのではなく、上手く付き合っていく。それが仏教のおすすめする生き方だ。時には悪友と盗んだバイクで走りだそうぜ!

ちなみに次回のテーマは「ライフ八苦」! 四苦八苦の残り4つ、「八苦」について説明するよ!

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稲田ズイキ

いなだ・ずいき●僧侶。1992年京都の月仲山称名寺生まれで現・副住職。同志社大学を卒業、同大学院法学研究科を中退、その後デジタルエージェンシー企業インフォバーンに入社。2018年に独立し、寺に定住せず煩悩タップリな企画をやる「煩悩クリエイター」として活動中。コラム連載など、文筆業のかたわら、お寺ミュージカル映画祭「テ・ラ・ランド」や失恋浄化バー「失恋供養」、煩悩浄化トークイベント「煩悩ナイト」などリアルイベントを企画しています。フリースタイルな僧侶たちWeb編集長。Twitter @andymizuki
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竹内佐千子

たけうち・さちこ●漫画家。おっかけ対象が男子で恋愛対象が女子のレズビアン。
自身の恋愛体験を描いたコミックエッセイをはじめ、おっかけ、腐女子、などをテーマにしたコミックエッセイを描き続け、最近はストーリー漫画も描いている。
赤ちゃん本部長』(講談社)、『生きるために必要だから、イケメンに会いに行った。』(ぶんか社)など。
ホームページhttp://takeuchisachiko.jp/
Twitter @takeuchisachiko

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