2019.5.26
なぜ仏像の髪はブツブツなの? 仏のキャラデザの謎を説明してみた
皆さん、思い出してみてほしい。
お寺を訪れて、初めて仏像を眺めたときのことを。
遠足で行った奈良の大仏、近所のお寺の仏像……。
それぞれがそれぞれのやり方で、仏像と出会っているはずだ。
仏縁とラブストーリーは突然にやってくるものである。
仏像との記念日が思い浮かんだら、第一印象を思い出してみてほしい。
「わ〜!ありがたい〜」や「なんか見ていると落ち着く……」といった、あるあるな感想よりも速く、脳裏によぎったものがあったのではないだろうか。
寺に入る。センターになんかヤバい像が立ってる。
うわ、なんか、ヤバい。あれ、ウルトラマンか? ここはウルトラマン記念館なのか? あ、いや、違うな……。もっとヤバいやつだ。
ん? あ〜〜〜〜!あ〜〜〜〜!髪!!!髪が!!!!!髪がヤバい!!!!!!!パーマ?? パーマヤバい!!!じいちゃんのパンチパーマどころじゃない!!!!ブツブツ!!!ブツブツが!!!!!なにあの髪!!!!!髪ィ!!!!!!!!!
そう、こんな風に、出会いは「髪、ヤバい。」で終わったはず。
もしくは「耳、長い。」で終わった人もいたかもしれない。
なんにせよ、ファーストインプレッションのパンチ力が強すぎる。
人知を超えてしまったパンチパーマが、そこにはあるのだ。
若干、「初見の髪のインパクト」を誇張しすぎた感があるし、実際そんなに気にならなかった人も多いかもしれない。
ただ、今回はこの「髪」こそがメインテーマなので、ご容赦いただきたい。
ラブストーリーだって、多少のご都合主義はつきものなのだから。
さて、今回はどうしても気になってしまう、仏のヤバい髪こと「螺髪」の話をさせてください。
(「らはつ」とも言うが一般的には「らほつ」と読むことが多い)
螺髪(らほつ)とはなんなのか?
ぶっちゃけて言うと、寺生まれで、お家に仏像が並んでいる環境で育った僕も、中学生くらいまで「仏」の存在を「宇宙人」だと思っていた。
だって、あのフォルム。表面がブツブツしていて、頭頂部に盛り上がりがあって(おまけに耳が長いって)……。
完全に『スター・ウォーズ』か『ファイブスター物語』の住人じゃないですか。
無礼を承知で言うけど、悟り開く前に縮毛矯正した方が……(おっと、誰か来たようだ)
そんな宇宙人のような髪型「螺髪」。
実はそのルーツはお経にある。
それが、「三十二相八十種好」である。
「なんか難しそう」と思われるかもしれないが、「仏とはこういう特徴がある」という説明、いわば「仏のキャラデザの定義」である。
林家パー子だったら、「ピンク」「カメラ」「奇声」と特徴が挙げられるみたいに、仏さまも32個のわかりやすい特徴「三十二相」と、80の細かい特徴「八十種好」で構成されているのだ。
基本的にすべての仏像・仏画はこれに倣って作成されているのだそう。
例えば、一部を紹介すれば、「足下安平立相」といって、足に土踏まずがない「扁平足」が仏の特徴として挙げられたりしている。扁平足の僕、自己肯定感ガン上がりである。
他にも、「四十歯相」といって40本の歯を有していたり(普通の人は32歯)、「金色相」といって身体が黄金色に輝いてたり、「おいおい、超人か? サイヤ人か?」と疑ってしまう特徴も存在する。
その三十二相にある一つが、「毛上向相」。
すなわち「体の全ての毛の先端が全て上になびき、右に巻いている」状態を表現したものだ。それが螺髪である。
・体の全ての毛の先端が全て上になびく
・右に巻いている
もう言うまでもないだろうが、とてつもない天パである。
髪だけではない。仏さまは、腕毛からすね毛から、すべての体毛がありえない角度のカールをしていることになる。やばい。
さらに、三十二相の中には「一一孔一毛生相」という特徴があり、
・身体の毛穴にはすべて一毛が生えている
・その毛穴からは香りが放出されている
・毛の色は青瑠璃色
と説明されているので、誤解を恐れず言わせてもらうと、仏さまは、
「いい匂いがする全身毛だらけの青毛カールおじさん」ということになる。(絶対に誤解をしないでください!)
とはいえ、残念ながら、仏さまの髪以外の体毛が仏画や仏像で表現されることはない。(少しホッとした自分がいる。)