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高橋綾子「綾子のギョーカイ総受けグルメ手帖」

黒壁の秘密のお店が日本酒好きの“聖地”と呼ばれる所以を教えます!〜animism bar 鎮守の森〜

後味が悪いのです。

お酒自体はおいしいのですが、何というか辛子の味が残る感じ。辛子とか山葵がツーンときても断ち切ってくれるお酒があるなんて嘘みたいな話ですが、このようにその場で実体験してしまえるので、たちまち竹口さんの信者になってしまうってワケ。

飲み比べをすればたちまち竹口マジックにかかってしまいます
飲み比べをすればたちまち竹口マジックにかかってしまいます

出ました!

同じお酒を違う酒器で飲むとどうなるかを、長野県信州新町にある尾澤酒造場の「19」で実験します。
はじめに広口の逆三角形の酒器で飲んでみる。
実にスッキリと軽快な味わいです。
これを基準にして口径の狭い逆三角形の酒器だと、どうなるでしょう?

すごい! まったくの別モノのように味がシャープにとがってくる。
そして最後のブルゴーニュグラスだとグッと丸みが出てまろやかで香りも立つ。本当に同じお酒なのかと何度も味比べしても結果は一緒。
そしてその論理は、竹口さんの分析に基づいて成立しています。

次の実験は同じお酒で同じ酒器、でも注ぎ方を「口に近いところからスルッと注ぐ」「口から5cmくらの高さからトポトポ注ぐ」「高いところからドボドボ注ぐ」の3種類に変えています。結果はこんなことってあるの? というくらい違います。
どう違うかは、ぜひ実体験してみてください。

〆は「トマトと大葉のカッペリーニ風素麺」と純米吟醸 雄町「美寿々」をペアリング
〆は「トマトと大葉のカッペリーニ風素麺」と純米吟醸 雄町「美寿々」をペアリング

いろいろ実験してわかったことは“日本酒は自由”ってこと。

たとえ「この味あまり好きじゃないな」と思っても、酒器の形や素材や厚み、注ぎ方、燗にするなど温度を変えることで好きな味になってしまうことすらもあるのですから、本当に不思議。
でもそれは竹口さんだからできること。
だって同じ料理を提供しても、ありとあらゆる状況を考慮してお酒を選ぶので、組み合わせは無限大、同じペアリングを経験することは絶対にないのです。

竹口さんはさながら味を自由自在に操るマジシャンで、タネも仕掛けもあるのはわかっているのにまんまと引っかかってしまう私たち。
でもそれが楽しくてうれしくて、また来てしまうのです。

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高橋綾子

たかはし・あやこ●フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレス時代から培った〝食″へのこだわりは、舌の肥えた業界人も頼りにするレベルの高さ。年間1000を超えるという外食の日々が築き上げたおいしいもの好きが嵩じて、ついに2018年2月に東京・下北沢にてレストラン「üchï(うち)」をオープン。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。
Facebook→https://www.facebook.com/ayako.takahashi.1671

uchi→http://uchi.tokyo/

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