よみタイ

奇跡の天ぷらを食べに静岡のとんでもない人気店へ!  〜板前てんぷら 成生

うっすらとピンクがかった太刀魚は紫蘇とともに揚げています
うっすらとピンクがかった太刀魚は紫蘇とともに揚げています

キタキタキタ〜!
あっつあつの太刀魚の上にたっぷり大根おろしをのせて口に入れる。
まず衣のサックサクがあって、次に厚い身のホックホクとふわふわがくる。
これ、本当に魚なの?

所作も美しい志村さん。ピーターラビットが泣いて喜びそうな大きな人参は葉っぱも色鮮やか
所作も美しい志村さん。ピーターラビットが泣いて喜びそうな大きな人参は葉っぱも色鮮やか

ハマグリかと思うくらい大きくてぷっくりとしたアサリは完全に火が入っているのに、まるで生のようにぷるんぷるんでとろんとろん。
大浦ゴボウもニンジンも、どうしてこんなに甘いのか。
さつまいもをいちばん甘くできるのは石焼きだと思っていたけれど、完全に敗北です。

こちらは根元の方。水分がキラキラして中に十分残っているのがわかります
こちらは根元の方。水分がキラキラして中に十分残っているのがわかります

アスパラガスは半分にして2度に分けて提供されます。
初めはみずみずしくやわらかな穂先側。フキノトウや鯵などいくつか挟んで根元側がきます。穂先に比べると甘みもある。
どちらも中から水分が滲んでいて本当にジューシー。どのタネにも言えるのは水分をぎゅっと抱きしめていることかな。

その水分を保つために衣があります。
志村さんはいつも粉も合わせ水も冷蔵庫でしっかり冷やしています。
ご覧の通り、衣はタネをしっかり纏っていますがとっても軽く、食材が持つ自然の味や食感が際立っている。

どうしてこんな衣が作れるのだろうか。

見事なミディアムレアに揚がった鯵
見事なミディアムレアに揚がった鯵

揚げる順番はかなり大切で、その日の食材を見て組み立てているそうです。揚げていくにしたがって衣に対して油のあたりがどんどんまるくなってくる。
何から揚げるか、どの食材の後に油を変えるか、熟考しているそう。
順番次第で揚がり方だけでなく私たちの感じるおいしさも違ってくるのでしょうね。

タマネギは甘くてサクサクでしっとり
タマネギは甘くてサクサクでしっとり

太刀魚は直接器に入れてくれ、ゴボウやニンジンは直接手で持って食べてくださいと言われるし(なぜかぜんぜん熱くない)、揚げてからしばらく置いて予熱で火を入れたさつまいも、タマネギや筍は和紙に包んで手渡しする。
鯵のように小皿にのせて出されるものもあるし、提供の仕方も多彩なのです。これもきっと研究して決めているのね。

泥付きのままの野菜が鎮座しているのを見ると絶対においしい予感がして心が弾みます
泥付きのままの野菜が鎮座しているのを見ると絶対においしい予感がして心が弾みます

おまかせのコースは空きっ腹に優しく沁み入るひと口サイズの汁椀からスタート。次にお造り、そのあと10品前後天ぷらが出され、サラダが入り、また天ぷらに戻り、〆の天丼か天茶か天ばらをいただき、デザートで終了します。
毎回、この口福の時間に深い満足感を覚えます。

本当にいつも優しい笑顔の志村さん。声がまた素敵なのです
本当にいつも優しい笑顔の志村さん。声がまた素敵なのです

とにかく志村さんの食材に対しての知識と目利きがすごい。

もともとは日本料理店で修業されたのですが、天ぷらの奥深さに惹かれ天ぷらの道を選び成生を開業。静岡の食材を自分で調べて生産者と会い、仕入れさせてもらうのは本当に大変なことです。
最高の食材が集まると言われている東京ですら手に入らない、生命力にあふれた素晴らしい食材が志村さんの所に集まってくるのは、揚げる時間や温度を変えてどのくらい水分が残るかとか、どうやって仕入れた食材を最高においしく提供できるか、日々努力に努力を重ね少しずつ信頼を得てきたからだと思います。

その志村さんと生産者さんが創りあげた結晶、これが当たり前の天ぷらであるはずがありません。
とんでもない人気店なのに来るたびに「最高!」だと思える本当に唯一無二のお店なのです。

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高橋綾子

たかはし・あやこ●フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレス時代から培った〝食″へのこだわりは、舌の肥えた業界人も頼りにするレベルの高さ。年間1000を超えるという外食の日々が築き上げたおいしいもの好きが嵩じて、ついに2018年2月に東京・下北沢にてレストラン「üchï(うち)」をオープン。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。
Facebook→https://www.facebook.com/ayako.takahashi.1671

uchi→http://uchi.tokyo/

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