2025.2.21
宇宙飛行士のネクストキャリアとは? 宇宙開発の未来を切り開く知られざる活躍
この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。
最終回となる今回は、宇宙トピックには欠かせない「宇宙飛行士」について。世界中から注目を浴びるミッション中だけでなく、終了後も最先端の宇宙ビジネスで活躍する人も。意外と知られていない、宇宙飛行士のネクストキャリアについて解説!
最終回「宇宙飛行士のネクストキャリア」のはなし
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NASAやJAXAだけじゃない! 宇宙飛行士のキャリアプラン
宇宙飛行士はとても優秀な一握りの人材で、そういった人たちは基本的にはJAXAやNASAに所属して、プロジェクトに応じて宇宙に行ったり啓蒙活動をしている、というイメージを持っているのではないでしょうか。だからこそ、「宇宙飛行士のネクストキャリア」と聞いて、具体的にどんなキャリアがあるのか、知らない人も多いかもしれません。
しかし、実際には日本でも海外でも、宇宙飛行士たちは経験を生かして次のステップへと新たなキャリアを進んでいます。しかもその存在は、日本の宇宙開発の発展にとって非常に重要な役割を担っています。
今回は、私が感じた彼らの存在の偉大さと、今後の宇宙飛行士たちの歩む道についてまとめてみたいと思います。
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宇宙開発の仕事をするには、これまではJAXAやNASAに所属する必要がありました。宇宙に関する仕事は政府主導のものが多かったからです。しかし近年、この流れは大きく変わり始めました。
連載の中でも紹介しましたが、政府から民間への委託が進み、宇宙ビジネスが活発になってきています。これは、アメリカで成功した事例をもとに、世界各国が同様の動きをしているからこそ、現在の迅速な宇宙開発が進んでいるわけです。
こうした民間企業の宇宙ビジネス参入の流れは、宇宙飛行士のキャリアにとっても無関係ではありません。宇宙飛行士は宇宙開発に携わる人材として民間企業においても非常に重要な存在として注目されています。理由は比較的わかりやすいと思います。それは、いわずもがなですが宇宙飛行士の持つ能力の高さと、JAXAだけでなくNASAなどの最先端の宇宙開発業務のキャリア、そして何より「宇宙に行ったことがある」という圧倒的な経験です。

日本国内でも宇宙飛行士がJAXAを退職し、新たな道を切り開いている方々が多くいますので、その実例を見てみましょう。
記憶に新しいのは、宇宙飛行士の中でもベテランの若田光一宇宙飛行士ではないでしょうか。2024年3月31日をもってJAXAを退職されたことがニュースで大きく取り上げられました。そしてその後、Axiom Spaceというアメリカの宇宙企業に所属されました。Axiom Spaceは民間宇宙ステーションの構築や宇宙飛行サービスの提供を進めている企業。若田さんはこれまでの宇宙飛行士としての経験を活かし、宇宙飛行士兼最高技術責任者という役割を担っています。
若田さんがAxiom Spaceに移ったタイミングで、ある言葉が話題になりました。それは「民間宇宙飛行士」です。
前述の通り、宇宙飛行士として働くにはJAXAやNASAに所属するということが主流でした。けれど今後は、人類が宇宙へ行き、さまざまな開発を進める有人宇宙開発についても他の宇宙ビジネス同様、民間委託の流れがさらに強まっていくと考えられています。
つまり、民間で育成された宇宙飛行士がJAXAやNASAのミッションに投入される見込みがあるということです。
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