2024.11.22
アルテミス計画を徹底解説!【後編】ビジネスパーソンなら知っておきたい「宇宙ビジネス」の熱気
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一方、日本でもアメリカの成功を手本に、JAXAを中心に宇宙ビジネスの支援が強化されています。
アルテミス計画の加速に合わせて、「10年で1兆円」という予算が話題になった宇宙戦略基金が創設されました。
これは民間企業への資金援助システムとして機能し、日本国内での技術開発や月面探査、資源利用プロジェクトの推進に活用され、宇宙産業全体の成長を力強く支えています。
この連載でも紹介した月面着陸機を展開するispaceや、宇宙ゴミを除去するアストロスケールといった企業も上場を果たし、一気に国内でも宇宙ビジネスに注目が集まりました。
これらの企業は、日本の宇宙スタートアップの先駆的な存在で、設立から約10年ほど。私が天文学の研究を始めた2016年頃には、宇宙スタートアップ企業はまだ数えるほどしか存在しませんでした。
実は、私自身天文学者を目指す前にこうした革新的な会社に参加できないかと真剣に考えていた時期もありました。もちろんその頃今のようなアルテミス計画に合わせた大きな盛り上がりは起きていませんでしたが、それでも飛び込みたいと思っていました。
その中で出会ったのが、ALEという会社。
この会社はビジネスの方向性がユニークで、「人工流れ星」というエンターテインメントを宇宙から届けるサービスを展開しています。
これまでは限られた条件でしか見られなかった流れ星を、花火や最近流行りのドローンアートと同じような感覚で楽しむことを目指すサービスで、人工衛星からパチンコ玉サイズの物質を地球大気に突入させて発生させる、というものです。
エンタメ性の高さはもちろんですが、民間企業でありながら、科学研究にも貢献しようとしている点にも心惹かれました。
ALEではパチンコ玉サイズの人工流れ星と地球大気がどんな反応を起こすかを観測することで新たな大気データを取得することも目指しています。技術的なハードルで観測ができなかった地球上空部分の大気データの取得によって、気象や気候変動に対する理解を進めようというビジョンです。
科学者になるか悩んでいた私にとっては、民間企業でそこまでチャレンジできるんだ、という驚きもあり、よりこの会社に惹かれたのだと思います。
私がALEを知ったのは2015年で、大学院進学をしたばかりのころでした。当時の赤坂の雑居ビルのオフィスを訪れ、代表取締役の岡島礼奈さんとお話ししたときのことは今でも鮮明に覚えています。後にポッドキャストや執筆活動を通じて再びお会いし、当時のことを覚えていてくださったことは本当に嬉しい驚きでした。
そこでお話させていただいたことから、これからの宇宙ビジネスの現場で必要な人材はスペシャリストだ、と考えるようになり科学者を本気で目指し始めました。その結果NASAでの研究経験を積むことができるなど、今の私のキャリアを支えるものを得ることができたので、あの時宇宙ビジネスに興味を持って、オフィス訪問までさせてもらって本当によかったと思っています。
ALEは地球周囲でのサービス展開がベースなので、アルテミス計画に直接関わるようなポジションではないですが、宇宙ビジネスのこの大きな波を作ってきた立役者であることは間違いありません。
岡島さんのように情熱を持つ人々が宇宙ビジネスをさらに盛り上げてくれることを楽しみにしています。
現在日本では、JAXAを中心に企業選定が進められていて、一丸となって宇宙開発に取り組む体制が整いつつあります。これはNASAの取り組みに倣ったもので、日本の宇宙ビジネスがさらに活発化することが期待されています。
特に、月面での資源活用や長期滞在技術の進展は、地球のエネルギー問題や環境保護にも貢献する可能性があります。
宇宙は単なる探査の舞台ではなく、新たな経済圏としての役割も担い始めているのです。
アルテミス計画を起点に、宇宙は私たちの日常にますます近づいてきています。低コストの打ち上げ技術や月面資源の活用、さらには宇宙観光まで、宇宙ビジネスは多様な分野で飛躍的な成長が期待されています。
アルテミス計画がもたらす革新は、宇宙へのアクセスを広げ、私たちの生活に新たな可能性と興奮をもたらす新時代の幕開けを告げています。
福岡県岡垣町にあるFUKUOKA CRAFT BREWINGの「TOKYO TONE」。ALE社の思い出を紹介したこの記事にはエールビールだろうと思い、東京赤坂での思い出と振り返りながらこちらをチョイス。飲みやすいペールエールにホップの香りがしっかりと乗った、フルーティーさも感じる一杯です。連載13回目の記事内で取り上げたアメリカ・ニュージャージー州の「Tonewood Brewing」とのコラボ作品なので、こちらのビールともあわせて楽しんでもらいたいです。
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次回連載第27回は12月13日(金)公開予定です。
参考資料
一般財団法人 新技術振興渡辺記念会 平成26年度下期 科学技術調査研究助成「新しい宇宙活動を創出するための官民連携方策に関する調査研究」/一般財団法人 日本宇宙フォーラム
Commercial Lunar Payload Services/NASA
「10年で1兆円」宇宙戦略基金を知る、内閣府 宇宙開発戦略推進事務局への3つの質問/宇畑 2024年5月10日
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