2024.11.22
アルテミス計画を徹底解説!【後編】ビジネスパーソンなら知っておきたい「宇宙ビジネス」の熱気
この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。
今回は、アルテミス計画が進むにつれて盛り上がりをみせている「宇宙ビジネス」について。今後の成長が約束されているこの分野は、日本市場にも影響が大きいはず。数年後を見据えてぜひおさえておきたいトピックです!
第25回「アルテミス計画と宇宙ビジネス」のはなし
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アメリカでの成功を好例に、日本でも民間企業が活躍する時代へ
アポロ計画から約60年の時を経て、人類が再び月へ向かう夢を追いかけるアルテミス計画が今、熱く進行中です。前編ではアルテミス計画の全貌に迫り、中編ではその科学的成果への挑戦を紹介しました。
現在の宇宙開発がこれほどスピーディーに進んでいるのは、単にNASAやJAXAの技術力が飛躍的に向上したからだけではありません。実は、「宇宙ビジネス」の成長と、それを支える共創の環境が大きな鍵を握っているのです。
アメリカでの成功事例をきっかけに、世界中で宇宙ビジネスの波が広がり、アルテミス計画の影響も加わって今後この分野はますます盛り上がることになります。今回は、そんなワクワクする宇宙ビジネスの熱気を紹介します。
「宇宙ビジネス」という言葉がありますが、実際は「耳にしたことはあるけれど、どういうビジネスを指すのかよくわからない」という方が多いのではないでしょうか?
一方で近年、この分野の勢いは急速に増しており、注目度も高まっています。
宇宙ビジネスがここまで加速した背景には、アメリカでの成功事例が大きく影響しています。NASAは民間企業と連携し、「商業軌道輸送サービス(COTS)」や「商業乗員輸送計画(CCP)」といったプログラムを展開。COTSでは国際宇宙ステーション(ISS)への貨物輸送、CCPでは宇宙飛行士の国際宇宙ステーションへの輸送を民間に委託し、コスト削減と効率化を実現しました。
その中で、連載でも紹介したイーロン・マスク率いる「SpaceX」は、クルードラゴンとファルコン9ロケットを開発し、2020年には民間企業初の有人打ち上げに成功。
この画期的な成功は、宇宙開発が政府だけでなく民間企業によっても実現可能であることを証明し、日本を含む世界各国の宇宙ビジネスをさらに後押しする原動力となりました。
アルテミス計画を中心に、アメリカでは民間企業との協力がさらに加速しています。これまで築いてきた協力体制を基に、月面着陸を目指す技術開発のためのCLPS(Commercial Lunar Payload Services)を展開。CLPSがCOTSやCCPなど違う点は、その目的地が国際宇宙ステーションから「月」へと明確に設定されたことでしょう。民間企業と組んで月面を目指していくことが明示されて、宇宙ビジネスへの注目度が世界中でさらに増しました。SpaceXなどの企業を支援しながらも民間企業の間での競争も促し、アルテミス計画の中核となる技術を育てています。その結果、若干の遅れはあるものの計画は順調に進行し、有人月面着陸も現実味を帯びてきました。
月面基地の建設や資源利用のためのインフラ整備が進む中、宇宙データ通信やロボティクスなど新たな技術への需要も急増。各国の企業がそれぞれの強みを活かし、協力し合いながら未来の宇宙経済を築き上げています。
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