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満月は地震注意? 改めて注目したい大地震と月との関係

1日10分、毎日更新されるポッドキャスト「宇宙ばなし」が人気を呼び、注目を集める佐々木亮さん。

この連載では、独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わった経験と、天文学分野で博士号を取得した知見を活かし、最新の宇宙トピックを「酒のつまみの話」になるくらい親しみやすく解説します。そして、宇宙と同じくらいお酒も愛する佐々木さんが、記事にあわせておすすめの一杯もピックアップ。

今回は満月と地震について。実はあまり知られていなかった関係性を示唆する研究を紹介します。大地震に対する備えが喚起されている今、満月が防災意識を高めるきっかけになるかもしれません。

第23回「満月と地震」のはなし

記事が続きます

地球に住んでいる中で「宇宙の一部だな」と実感するタイミングはありますか? 星空を眺めたり、ブラックホールに思いを馳せたりしている時にそう感じる人は多いでしょう。 

一方で、地球上で、特に日本に住んでいると意識せざるを得ない自然現象の一つに地震があります。
ですが、実は巨大地震が宇宙からの影響を受けている可能性があるというのは、あまり知られていない気がします。

南海トラフ地震や、首都直下型地震の発生リスクが声高に叫ばれる中で、知っておきたい月の満ち欠けと巨大地震の関係性について今回は整理していきます。

NASAの施設があるニューオーリンズで撮影された2023年のスーパーブルームーン 画像提供/NASA 
NASAの施設があるニューオーリンズで撮影された2023年のスーパーブルームーン 画像提供/NASA 

まだ記憶に新しい人が多いと思いますが、2024年8月8日に起きた宮崎県での震度6弱の地震を受け、南海トラフ地震に対する発生確率が通常より高まっているとして、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が出され、注意が呼びかけられました。

私自身、ハザードマップで赤色に表示されている場所に住んでいます。災害に対する備えをしながら、この連載でも紹介した地震の発生頻度と規模の関係性のデータを考えると、数倍の発生確率の上昇を、どう捉えるべきか考えさせられました。

巨大地震が発生しやすい条件について、かつて面白い研究結果がNatureの姉妹雑誌「Nature Geoscience」に発表されたことがあります。
それは大潮、つまり「月の満ち欠け」と地震の関係です。なんと、大潮となる満月と新月のタイミングでは巨大地震が発生しやすくなるというのです。

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2016年、過去40年間に起きたマグニチュード5.5以上の地震を対象に、満月と新月が引き起こす大潮との相関が研究されました。
その結果、2004年のスマトラ沖地震や、私たち日本人にとって忘れられない2011年の東日本大震災などを含むマグニチュード8.2以上の巨大地震12例のうち9例が大潮での出来事だったそうです。
逆に、潮汐力と小さな規模の地震との間には明らかな相関は見られなかったといいます。

大潮による潮位の変化や、そもそもの潮汐力による地殻の変動による影響が、これらの地震発生に対して関わりがあるのではないかと考えられているようです。

こんな話を聞くと、満月や新月のタイミングは少しソワソワしてしまいます。実は8月、南海トラフ地震への警戒が強まっている中で、月がパワフルな影響を地球に与えている時期がありました。

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佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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