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もはやアートを超える!? ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮った天体写真が美しすぎる!

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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した美しくダイナミックな画像を、専門家目線の解説と一緒にみていきましょう。これまでみてきたどんな宇宙の画像よりも綺麗な写真の数々を厳選しました。

まずはジェームズ・ウェッブの運用1年を記念して公開された「星のゆりかご」。この画像は綺麗さとダイナミックさを兼ね備えています。「へびつかい座ロー分子雲領域(Rho Ophiuchi cloud complex)」と呼ばれる場所は、地球から約390光年の距離にある星が生まれる現場であり、地球から最も近い星を作り出す領域の一つです。赤ちゃん星が生まれる場所だから、星のゆりかごと呼ばれています。

へびつかい座ロー分子雲領域(Rho Ophiuchi cloud complex) 画像提供/NASA, ESA, CSA, STScI, Klaus Pontoppidan (STScI)
へびつかい座ロー分子雲領域(Rho Ophiuchi cloud complex) 画像提供/NASA, ESA, CSA, STScI, Klaus Pontoppidan (STScI)

若い星が放出するジェット噴射によってダイナミックに見えている右上の赤い領域と、巨大な星が放出する星風の衝突によって輝く下の領域のコントラストに心惹かれる1枚です。
星も人間も、若い時に活動的であるという共通点を感じさせてくれます。

おうし座方向にある「かに星雲(Crab Nebura)」は、星の一生の最後の瞬間に引き起こされる超新星爆発と呼ばれる現象の残骸です。
西暦1054年に発生した超新星爆発の残骸と考えらえていて、それが今も宇宙空間に残っているのです。当時この爆発は世界中様々なところで確認されていたため、歴史的な書物にもその爪痕を残しています。

この連載の中で紹介した、鎌倉時代に太陽フレアによるオーロラ発生を記録していた藤原定家の「明月記」、中国の歴史書「宋史」にもこの爆発に関する記録が残っています。オーロラと並んで、この時代の天体ショーとして注目されていたんですね。

その超新星爆発の残骸「かに星雲」をジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した結果がこちら。

かに星雲 画像提供/NASA, ESA, CSA, STScI, Tea Temim (Princeton University)
かに星雲 画像提供/NASA, ESA, CSA, STScI, Tea Temim (Princeton University)

パッとみただけで伝わってくる爆発のダイナミックさは圧巻です。

実はジェームズ・ウェッブは、ガラケーの通信でもよく使っていた赤外線を観測する人工衛星です。
より遠くの宇宙を見ようとする時は赤外線が適しているという性質から、ジェームズ・ウェッブは赤外線を利用しているのです。

一方で、かに星雲は、私が専門で研究していたX線天文学でも非常に注目されている天体です。
X線は、「熱くエネルギッシュな現象」を捉えることが目的のときに利用されます。
詳しくは連載で解説したX線天文学の記事を読んでもらいたいですが、超新星爆発のようなエネルギーに満ちた星を観測するのに適しているわけです。そのX線で見るかに星雲がこちら。

X線で捉えたかに星雲 画像提供/NASA, CXC, SAO
X線で捉えたかに星雲 画像提供/NASA, CXC, SAO

ジェームズ・ウェッブとは全く違った天体に見えると思います。これが、宇宙を様々な光の種類で見ることの重要性です。光の違いによって、ここまで見える世界が変わるんです。
なぜこの天体がX線天文学にとって重要かというと、かに星雲はX線で常に同じ明るさで輝いているため、X線観測衛星の測定の基準天体として利用されているからです。
X線天文学の研究者は、かに星雲をどう捉えるかで観測機の能力を掴んでいたりもするので、かなり重要な存在になるのです。

このようにX線で捉えたかに星雲は全く違う天体に見えますが、ジェームズ・ウェッブの画像と重ね合わせるとこんな感じです。それぞれの観測と合わせると息を呑む写真になります。

画像提供/X-ray: NASA, CXC, SAO  Infrared: NASA, STScI   Image Processing: NASA, CXC, SAO, J. Major
画像提供/X-ray: NASA, CXC, SAO Infrared: NASA, STScI Image Processing: NASA, CXC, SAO, J. Major

爆発の広がる様子や、実は中心に天体があることなど、両者を重ねることで様々な情報がわかってきますね。かに星雲、本当に綺麗です。
最後に、細かい説明はせずに、是非知ってもらいたいジェームズ・ウェッブの写真をいくつか載せておきます。

下の写真は6,500光年離れた、広大なわし星雲内の小さな領域である「創造の柱(Pillars of Creation)」を捉えたもの。

画像提供/NASA, ESA, CSA, STScI
画像提供/NASA, ESA, CSA, STScI

渦巻き銀河 NGC 1512。対角線上の色の違いを境目に、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測結果は左上、ハッブル宇宙望遠鏡の観測結果は右下に表示されていて、細かいガスの構造がくっきり見えている様子がわかります。

画像提供/NASA, ESA, CSA, STScI, Janice Lee (STScI), Thomas Williams (Oxford), PHANGS Team
画像提供/NASA, ESA, CSA, STScI, Janice Lee (STScI), Thomas Williams (Oxford), PHANGS Team

太陽系第七惑星「天王星」。周囲にある環まで綺麗に捉えられています。天王星表面の右側で輝いている部分は季節によって見える北極冠という現象です。

画像提供/NASA, ESA, CSA, STScI
画像提供/NASA, ESA, CSA, STScI

ジェームズ・ウェッブは現在、宇宙の初めての星ファーストスターを観測するためのフェーズに入っています。
それと同時に、様々な天体を観測していて、太陽系以外で見つかった惑星の大気や、宇宙の果てにある銀河の観測なども行っており、それらが論文となり世の中に出始めています。
まさに天文学の時代を変える成果であり、今後宇宙の歴史を解明する大きな成果を残してくれることに期待します。

この記事のお供はこのお酒!

イギリスのBURNT MILL BREWERYによる「GALAXY FOG」。直訳すると“銀河の霧”という名前が、宇宙の銀河や星雲などを観測するジェームズ・ウェッブにピッタリだと思いチョイス。ダブルIPAの強いフルーティーなアロマの香りが最高でした。アルコール度数8.0%と比較的高いですが、それを感じさせない飲みやすさもありました。ブルワリーのHPではもう在庫はないようなので、酒店で見かけた時は是非!

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 次回連載第18回は8月9日(金)公開予定です。

参考資料

宇宙年齢/天文学事典

かに星雲/天文学事典

A Crab Walks Through Time/NASA 2018/3/14

WEBB SPACE TELESCOPE

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佐々木亮

ささき・りょう
理学博士。独立行政法人理化学研究所、NASAの研究員として研究に携わり、その経験と知見を生かし、ポッドキャスト「佐々木亮の宇宙ばなし」を毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回Japan Podcast Awardsも受賞する。現在はデータサイエンティスト、中央大学講師として活動している。
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