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カメの「冬眠からの永眠」に要注意! 意外と知らない冬眠の真実とリスク

また、カメは水中や土中で冬眠することが多いです。
水中冬眠の場合、どうやって呼吸をしているのかというと、まずは皮膚呼吸。そして次に、腸で呼吸しています。直腸内に入った、酸素を含んだ水から、腸の粘膜を通して酸素を体に吸収できる仕組みです。さらに、咽喉いんとうの粘膜でも呼吸できるといわれています。
冬眠中は代謝が落ちているため、こうした呼吸法で酸素がまかなえているようです。
ただ、メインは肺呼吸の動物ですから、冬眠中でも、まれに土や水面から顔を出して、息をすることがあります

というわけで、冬眠中のカメがいる池が完全に凍ってしまっては、命に関わる一大事なのです!

慌ててカメ池から氷を除去した際の様子。(撮影/大渕希郷)
慌ててカメ池から氷を除去した際の様子。(撮影/大渕希郷)

氷を叩き割ってカメを救出!

私はカメの飼育に2つの池を使っていて、一つは、地面の埋め込み式。こちらはポンプで水を回していたため、それほど凍っていませんでした。

問題はもう一つのタライ式のカメ池。
表面が完全に凍っているのを確認した私は慌ててカナヅチを持ってきて、厚さ2~3cmほどの氷を叩き割りました。
そのとき私の目がとらえたのは、同居冬眠させているメダカが氷の下で泳ぐ姿。
とてもホッとしました。
水槽の底部まで凍ってはない、つまり、カメたちは凍ってないと分かったからです。

その後、半日ほどかけて、しもやけになりながら氷を割り続けました。そして、タライのカメ池を水道栓の近くに移動。水を少しずつ流し込んで凍結を防ぐ応急処置を施しました。

タライ式のカメ池(緑矢印)を、埋め込み式のカメ池(赤矢印)より高い位置に移動。水道栓(青矢印)から水を少しずつ出し、オーバーフローで2つの池に流れ込むように応急処置した。(撮影/大渕希郷)
タライ式のカメ池(緑矢印)を、埋め込み式のカメ池(赤矢印)より高い位置に移動。水道栓(青矢印)から水を少しずつ出し、オーバーフローで2つの池に流れ込むように応急処置した。(撮影/大渕希郷)

もちろん私も、あらかじめ池の水位を上げておくなど、寒波に備えていたつもりだったのですが、甘かった。
家の外壁と室外機の配置の関係で、室外機の風が集約され、庭に吹き込んだことが、池の凍結に拍車をかけたようです。その室外機が何とか寒さに対抗しようと、さらに回転して冷風を送り出すものだから悪循環でした。
ちなみに、給湯設備も同じ理由で凍り付きました。
要は、少々凍るかなくらいの私の予想を上回る凍結が随所で起こってしまったわけです。

カメも私も凍死寸前の大騒動。
いや、水底まで凍っていなかったわけですから、カメの方が暖かったでしょうね……。

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大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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