2021.1.31
カメの「冬眠からの永眠」に要注意! 意外と知らない冬眠の真実とリスク
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。
前回は、動物の地震予知について解説しました。
今回は、寒波が襲った日に起きた「カメ救出騒動」と、冬眠のリスクについてのお話です。
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寒波の日、カメ池が凍った!
私は自宅で、ヘビ17頭を筆頭に、トカゲやカメ、カエル、ウーパールーパー、サソリ、クワガタ、魚類などをそれぞれ多数飼育しています。
これらの動物を連れて、大学や専門学校の講義を行ったり、幼稚園で「移動動物園」を開催したり、企業がCSR活動の一環として主催するイベントに出演したりしています。
最近では、テレビ番組に自宅からのリモート収録で参加し、カメラに向かって動物を見せながらその生態についてお話させていただくような機会も増えました。
なお、飼育している動物の中には、保護・引き取り個体もいます。どんな生き物でも、最期まで責任を持って飼うことは大切で、そのような講話に同伴させることもあります。
動物について科学的な興味や知識を持ってもらうためには、やはり“本物”を観察してもらうのが一番。
ですから、自宅における動物の飼育活動も、「どうぶつ科学コミュニケーター」である私の重要な業務の一つです。
生き物の世話に休日はありませんが、今のような寒い時期は少し飼育業務が楽になります。
冬眠する動物が出てきて、餌やりや水替えなどの頻度が減るからです。
ところが先日、そんな私の油断をつくように、とんでもない騒動が起きたのです。
1月8日、全国的に記録的な寒波が襲い、私が住む神戸も最低気温がマイナスになりました。
朝、庭に出てみると……
池の表面が完全に凍っている!
うっすらどころじゃない……ようにみえる……!
凍っているのはニホンイシガメやクサガメを冬眠させている池です。
外気温によって体温が変化する変温動物のカメは、気温が下がると体温も下がり、体の機能が低下し、冬眠に入ります。
冬眠と一口に言っても、動物種によってその体の状態はさまざま。
うちで冬眠させているカメ類の場合、代謝が落ちているだけで、呼吸もしていますし、場合によっては、ゆっくりと動くこともあります。
ときどき勘違いされている方がいるのですが、冬眠中といえども、いくらでも寒い環境に耐えられるわけではありません。
寒さで生物の体まで凍ってしまうと、一部例外の生物たちをのぞいて、生体内に氷のかけらができて、それによって細胞が破壊されていき、死に至ることもあります。
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