2020.7.26
やってはいけない!? 「トカゲの尻尾切り」に潜むリスク
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。
前回は「どうぶつ科学コミュニケーター」の役割についてのお話でした。
今回は、トカゲ釣りが特技のぶっちーさんが、「トカゲの尻尾切り」の知られざる“その後”について解説します。
どうぶつ科学コミュニケーターとして動物全般について講義や執筆なども行っている私ですが、動物の中でも主に爬虫類を専門としています。
というか、一番好きなのが爬虫類や両生類です。
生物系の学者や学生の間では、何を研究対象にしているかによって、「イルカ屋」「カメ屋」などと呼ばれることがあります。
私の場合は、学生生活最後は爬虫類の「トカゲ屋」でした。
幼少期より一番好きなのは両生爬虫類で変わりはないのですが、研究対象としては紆余曲折がありました。大学・大学院では、ミドリムシなどの単細胞生物→琵琶湖の魚類→トカゲ類と対象が変わってきたのです。
その話は機会があればまた!
ともかく大学院の最後は、トカゲ類の進化について研究し、その後、上野動物園の就職試験に合格。さらにラッキーなことに両生爬虫類館の飼育展示係に配属されました。
余談ではありますが、上野動物園の両生爬虫類館で同僚となった一人が、大学院の先輩(トカゲ研究者)でした。
狭い世の中です。
トカゲ屋の私が気になって仕方がない「匂い」のヒミツ
ここで少し私の大学院時代の研究について紹介させてください。
もともと日本の本州には、ニホントカゲ1種類だけがいると考えられていました。
ところが、研究が進み、伊豆諸島にしかいないはずのオカダトカゲが本州の伊豆半島にもいることがわかってきます。
実は、かつて伊豆半島は島で、およそ50~70万年前に本州に衝突する形で半島となったのです。
つまり、島に乗って“どんぶらこ”と(?)やってきたのがオカダトカゲです。
まさに「ひょっこりひょうたん島」状態ですね。♪トカゲを乗せて本州へゆく~♬
おもしろいことに、この2種類のトカゲは出会ってからその分布の境界線が変わっていません。
言い換えると、雑種をつくって混じったり、どちらかが駆逐されたりしていないということ。
これはおそらく、お互いに別種か同種か区別していて、雑種をつくるといったことが起きていないのだろうと考えられます。見た目はそっくりなのですが……。
そこで、そのヒミツをさぐる研究を大学院ではしていました。
ちなみに、ちょっとややこしいですが、さらにその後の研究でニホントカゲは琵琶湖を境に西のものがニホントカゲ、東のものがヒガシニホントカゲとなりました。
つまり、本州には3種類のトカゲ属がいることになります。
そのほかトカゲ類としては、ヤモリ類やニホンカナヘビなどがいます。
さて、トカゲがどうやってお互いを区別しているのか? それは、先輩らの研究で匂いであろうことはわかっていました。
では具体的にどんな匂いがどんなふうに効いているのか? それが私の研究テーマでした。
しかし、トカゲをはじめ野生動物を研究するときはその動物を自分で野外に探しに行く(採集する)ところから始めなければなりません。
そこで身につけた私の特技が「トカゲ釣り」。
竿にエサとなる昆虫などをつるして、釣り上げる方法です。