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Jリーグ連覇! 川崎F中村憲剛の今を作った松坂大輔と中央大学時代

今回よりスタートするスポーツライター二宮寿朗氏の新連載。不惑が間近に迫る年齢になりつつも、変わらず戦い続ける1980年生まれのアスリートたちの人生に迫ります。初回は、昨日12月1日(土)で終了した今シーズンのJ1リーグで見事2連覇を成し遂げた、川崎フロンターレの中村憲剛選手です!

取材は誕生日前日の10月30日の練習後に。37歳最後のポートレイト。(撮影/熊谷貫)
取材は誕生日前日の10月30日の練習後に。37歳最後のポートレイト。(撮影/熊谷貫)

38歳にしてキラッキラに輝く中村憲剛があこがれた同世代選手

松坂大輔が、とにかくまばゆかった。
キラッキラッに輝いて見えた。
1998年夏、テレビにかじりついて観たフランスワールドカップが終わったばかりなのに、都立久留米高校3年生のサッカー少年はまたもブラウン管の前を離れられないでいた。
夏の甲子園。
同い年の怪物が騒がれていた。松坂大輔の“快投乱麻”に中村憲剛は胸を躍らせた。

「ハッキリ覚えていますよ。PL学園との準々決勝で延長17回を投げ切って、決勝の京都成章戦でノーヒットノーランで優勝ですからね。漫画か!と思いましたもん。すごいなって。同い年には到底思えなかったし雲の上の人だけど、すごいなと思うと同時に、オレももっと頑張らなきゃなって」

かたやスター、かたや無名。
あれから20年が経った。日本サッカーにおいて中村憲剛の名前を知らない者など、もはや誰もいなくなった。川崎フロンターレひと筋16年。川崎のバンディエラ(旗頭)はチームの中核を担い続け、日本代表としても活躍してきた。30代半ばからがまさにのぼり坂。2016年、36歳でのJリーグMVP獲得はギネス記録にも認定され、翌年の2017年には悲願のリーグ初優勝を達成。そして今年もリーグ2連覇。背番号14はトップ下に君臨してキラッキラに輝いてみせている。

松坂は38歳になり、中村も38歳になった。
同世代の野球人は2018年限りでの引退が相次いだ。村田修一、杉内俊哉、小谷野栄一、矢野謙次、そして松坂の横浜高校時代の同僚、後藤武敏までも。一方で世代の中心にいる松坂は中日ドラゴンズに移籍した今年、6勝を挙げて復活の狼煙を上げている。
種目は違えど、同世代の引退は寂しくもある。一方で松坂の活躍は嬉しくもある。

「実際松坂さんとは一度もお会いしたことないですけど、プロに入ってからもずっと見ていますよ。西武ライオンズの1年目で最多勝の16勝を挙げて新人王になって、WBC(ワールドベースボールクラシック)でも優勝して、メジャーに行って……。ヒジを痛めてからも野球を続けてきた。やることはやったから、辞めるっていう選択肢もあるのかなと勝手に思っていましたけど、とにかく野球が好きで、投げることが好きなんでしょうね。抗ってくれているのは、同世代の一人としてうれしいし、正直この人かっこいいなって思っています。僕自身、今も勝手にモチベーションに変えさせてもらっていますよ」

オレだって1980年生まれの松坂世代。
野球は注目された世代である一方、サッカーはむしろあまり注目されなかった世代だ。
1つ年上が、いわゆる黄金世代。小野伸二、稲本潤一、高原直泰ら日本代表でも中核を担うスターがいた。1つ下がアテネ五輪世代。大久保嘉人、田中マルクス闘莉王、松井大輔、阿部勇樹とこちらも後の日本代表の中心選手がそろう。

「アテネ世代は〝谷間〟なんて言われてましたけど、黄金世代とアテネ五輪世代に挟まれて、いわばオレらの世代は〝超谷間〟。オグリ(大黒将志)、タマ(玉田圭司)、マキ(巻誠一郎)……4年に1度の五輪もかかわれない世代だったし、上と下の世代と比べたらあまり注目もされなかった。だからコツコツ頑張るしかなかった。
同世代のみんなもそうだと思うんですけど、意外としんどいサッカー人生を送ってきましたから。学生時代、プロになれると信じる一方で、なれないんじゃなかって思う自分もいました。今のままじゃキツいだろうなっていう思い。自分は世代別の代表歴もないし、注目もされていない。何者でもないってことが本当に悔しかった」

彼はそう言って、遠い目をした。

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新刊紹介

二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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