よみタイ

二宮寿朗「1980年生まれ。戦い続けるアスリート」
スポーツライター二宮寿朗氏が、不惑が間近に迫る年齢になりつつも、変わらず戦い続ける1980年生まれのアスリートたちの人生に迫る連載。川崎フロンターレの中村憲剛選手の第2回目です。初回では、プロになるまでの軌跡に迫りましたが、今回は今シーズン、新しい進化を遂げたそのプレイスタイルや、フロンターレ入団からいまにいたるまで変わらぬスピリットを紹介。ビジネスパーソンにもかなり参考になる考え方、満載です。

川崎F中村憲剛が、毎日、毎年どんどんうまくなる秘密とは!?

連覇を達成し「こんな幸せな38歳はいない」と語る。尽きないモチベーションこそ進化の秘密。(撮影/熊谷貫)
連覇を達成し「こんな幸せな38歳はいない」と語る。尽きないモチベーションこそ進化の秘密。(撮影/熊谷貫)

16年間変わらない日々。「今日の自分よりも明日の自分のほうがうまくなっていたい」

モチベーションは、己にある。
なくすも、つくるも自分次第。年齢は関係ない。状況も関係ない。いまなおモチベーションの泉が湧き出て止まらない。

11月10日、川崎フロンターレのJ1リーグ2連覇が決まった。セレッソ大阪にアウェーで敗れたものの、残り2試合を残しての独走優勝だった。取材エリアで報道陣に囲まれた中村憲剛はメモを走らせる我々にこう語り掛けた。

「続けるって大事だなって思います。何回も(心が)折れかけたことはありますけど、(タイトルを)取れていないことが自分のなかでモチベーションになっていましたし、去年初めて獲ったことでまたそれがモチベーションになる。つまり何でもモチベーションになるんだなって。要は自分次第なんだなって。自分がもういいかって思ったら多分そこで終わると思うし、去年(タイトルを)獲れて、また獲れて、またまた来年獲りたいなって思っています。そりゃそうでしょ。後輩たちにこれ(タイトル)をフロンターレの日常にしていくという自分の役目があると思うんで。ただ、本当に幸せな38歳だなって思います。こんな幸せな38歳いないと思います。みなさんに感謝したい」

幸せな38歳は、己に語り掛けてもいた。
モチベの種を公にして、それをモチベの肥やしとする。来年のモチベづくりは、優勝が決まった瞬間から始まっていた。

フロンターレの練習グラウンドは、川崎市麻生区にある。
クラブハウスは平屋のプレハブから約3年前に近代的な建物に変わった。選手のコンディションを考えてジャグジーや仮眠室なども設置されるなど充実している。

中村は2003年に入団してからというもの、ずっとここに通い続けている。
建物は変わっても、中村は変わらない。
16年間、試合に出続けていることも、麻生グラウンドでモチベーションの種に水をやり続けていることも。

うまくなろうとする。うまいのに、もっとうまくなろうとする。もっとうまいのに、もっともっとうまくなろうとする。もっともっと……そんな日々を繰り返している。

「きょうの練習をミスなく終わらせたい。そう思ってやっていても、どこかでミスが出てくる。じゃあ今ミスしたところをどうやったらしないで済むかって考える。自分のこだわりを追求していく、突き詰めていく毎日がずっと続いているっていうことですよね。やっぱり今日の自分よりも明日の自分のほうがうまくなっていたい」

2018年の中村憲剛は、一段とプレーの幅を広げていた。

リーグ開幕戦(2月25日)のアウェー、ジュビロ磐田戦からそうだった。クロスに飛び込んでのヘディング弾というなかなかお目に掛からないシーンから始まった。裏への飛び出しあり、守備のスイッチ役あり。シーズン通してトップ下に君臨し、攻守においてエネルギッシュに躍動した。リーグ戦33試合出場は、チーム2番目の数字。大ベテランは今シーズンもよく働いた。

うまくなりたい、はボールの扱いのみならず。
高い位置でボールを奪う守備と切り替えの迫力からゴールに結びつけるその連動のうまさは、目立った引き出しの一つであった。
4月21日のホーム、鹿島アントラーズ戦では相手のバックパスをかっさらってゴールを陥れた。7-0で圧勝した9月15日のホーム、コンサドーレ札幌戦ではボール奪取から味方のゴールを呼び込み、直後には逆に味方がボールを奪ったタイミングで前に飛び出して技ありのボレーシュートを決めている。守備でも攻撃でも、常におっかない存在の背番号14がいた。

「基本的には、どんなプレーもやりたい人間なんですよ。今、フロンターレは(戦い方の)幹がしっかりとあるので、ここ1、2年、自分は自分に集中してやりたいことを付け足していっている感じなんです。キャプテンから離れて、もちろん目配りやチームの雰囲気や全体像に気配りはしても、そこはキャプテンの(小林)悠や、(谷口)彰吾、(大島)僚太たち主軸になった彼らに任せて、今は自分のことを楽しんでやらせてもらっています」

楽しんでサッカーをやる。
キャプテンの立場じゃなくなったから楽しめるようになった、のではない。キャプテン時代もサッカーを楽しんでいた。いや、デビューからずっと。キャプテンを離れてみても、その楽しさを見つけている。
つまり、何でもモチベーションになるのと一緒で、何でも楽しみにしてしまう。それが中村憲剛という人なのである。

1 2

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Twitterアカウント
  • よみタイ公式Facebookアカウント

よみタイ新着記事

新着をもっと見る

二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、スポーツ報知にて「週刊文蹴」(毎週金曜日)、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

週間ランキング 今読まれているホットな記事