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満員の日産スタジアムを求め続けた兵藤慎剛。その願いが叶った2013年ホーム最終戦への消えない想い

1月26日の発売後、好評につき即重版も決定した二宮寿朗『我がマリノスに優るあらめや 横浜F・マリノス30年の物語』。
誌面の都合もあり掲載できなかったものの、F・マリノスの歴史に欠かすことのできないOBの特別インタビューなど、「我がマリノスに優るあらめや 外伝」特集として、全5回にわたり配信しています。
F・マリノス30年の歴史でリーグ戦出場6位のレジェンド、兵藤慎剛さんのマリノス・ストーリー後編は、やはりあの2013シーズンについて。母校、早稲田大学の監督として指導者の道を本格的にスタートする2023年の兵藤さんにも迫ります。
(前後編の後編/#前編。文中敬称略。呼称や肩書は文中の同年時点のものとなります)

(取材・文/二宮寿朗)
2013年11月30日、ホーム最終戦の先発メンバー。シーズン通してほぼ不動のこのベストメンバーで優勝に臨んだ。前列左端、背番号7が兵藤さん。(写真/©J.LEAGUE)
2013年11月30日、ホーム最終戦の先発メンバー。シーズン通してほぼ不動のこのベストメンバーで優勝に臨んだ。前列左端、背番号7が兵藤さん。(写真/©J.LEAGUE)

何も言わなくても流動的にやれていた2013年のF・マリノス

 ずっとコミュニケーションを取っていると、言葉が要らなくても分かり合えるようになる。兵藤慎剛は、そんな感覚を抱いていた。
2013シーズン、横浜F・マリノスは開幕から6連勝とロケットスタートを切る。
 主に右のサイドハーフに入る兵藤は第2節アウェイの清水エスパルス戦(3月9日/5-0)、第3節ホームのジュビロ磐田戦(3月16日/2-1)で2試合連続ゴールを挙げるなど好調のチームをけん引する存在であった。

「何も言わなくてもトップ下のシュンさん(中村俊輔)を中心に、2012シーズンの最後のほうから全員がリンクしはじめた感じがあったんです。ダブルボランチにはカンペーさん(富澤清太郎)とマチ(中町公祐)がいて、みんなそれぞれに周りをうまく活かすことができていました。(裏に抜け出した)エスパルス戦のゴールも、『カンペーさんからここにボールが来るよな』って感じがなんとなくありましたね」

 兵藤が28歳になる2013シーズンのF・マリノスはスタメンの平均年齢が30歳を超え〝オッサン集団〟とも揶揄された。だが経験値の高い選手を揃えたチームは、勝負のツボをよく押さえていた。

「シュンさんが動くと、相手もつられて動く。そうやって空いたスペースを使うのは僕も得意だったし、逆に自分が動いたところをシュンさんに使ってもらうというのもありました。シュンさんのサッカー観にちょっと近づけた感じもしていて、〝ヒョウ、ちょっとそこ空けといてよ〟と一言もらうだけで、どういうことがしたいのかって分かったりして。そこは常に考えていたし、今振り返っても、やりやすかったですね(笑)。  
 僕の後ろの右サイドバックにはパンゾー(小林祐三)がいて、ボールをこう出してほしい、こう動いてほしいということはお互いに理解できていました。誰が何を言わなくても勝手に流動的にやれていたのが、あの2013シーズンだったと思います」

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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