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国見、早稲田、F・マリノスでもキャプテン。「考えるマルチロール」兵藤慎剛が意識していたコミュニケーション法

2010年12月4日、日産スタジアムでの大宮戦。3年目のシーズン最終節、兵藤(写真前列右端)はキャプテンマークを巻いて先発。この試合が松田直樹や河合竜二、山瀬功治、清水範久、坂田大輔らのマリノス最後の試合となった。(写真/©J.LEAGUE)
2010年12月4日、日産スタジアムでの大宮戦。3年目のシーズン最終節、兵藤(写真前列右端)はキャプテンマークを巻いて先発。この試合が松田直樹や河合竜二、山瀬功治、清水範久、坂田大輔らのマリノス最後の試合となった。(写真/©J.LEAGUE)

3年目でキャプテンを任された激動の2010シーズン

 兵藤のリーダーシップはクラブからも評価される。
 加入2年目に副キャプテンとなり、〝ミスターマリノス〟木村和司が監督に就任した2010シーズンは栗原勇蔵とともに2人制キャプテンの1人に就任。背番号も「7」になった。そしてチームの大きな変化としては、欧州で7年半プレーした中村俊輔が戻ってきたことだ。

「世界の舞台で戦ってきたシュンさんと一緒にプレーできるのはとても刺激的でした。『そこが見えているのか』とか『そういう選択をするのか』とか現場で感じ取れるので、サッカーって面白いんだなとあらためて思うことができました。僕もプロ3年目になって、ガムシャラにやっていたところから、少し余裕もできたころでもありました」

 広島弁で「翻弄する」「弄ぶ」を意味する〝ちゃぶる〟を旗印にした攻撃サッカーを展開していく。3、4点取って爆発する試合もすれば、逆に1点も奪えずに沈黙する試合もある。好不調の差が激しく、結局、この2010シーズンは8位で終わってしまう。
 兵藤が入団してから9位(2008年)、10位(2009年)、そして8位と優勝争いに絡めず、2004年にリーグ2連覇を果たして以降はタイトルから遠ざかっている状況。シーズン最後に松田、河合、山瀬ら功労者が次々と契約非更新になったことは兵藤にとっても衝撃だった。

「非情だなと思ったし、これがプロの世界なのかと痛感させられました。痛みを伴っても変革させるということだったんでしょうけど、もしそれでも結果が出なかったら何の説得力もなくなる。クラブは思い切ったことをしたなとは感じました。マツさん、竜二さんたちがチームを離れてこれからどうなるんだろうという思いと、僕らがしっかりやらなきゃいけないという思いと、気持ちとしては半々だったように思います」

 河合からは事前に、非更新になることを知らされていた。ショックは拭えないながらも、立ち止まってばかりもいられなかった。
 国見でもワセダでもタイトルを獲ってきた。名門F・マリノスが復権を果たせていない現実に、兵藤自身ももどかしく、キャプテンとして責任を強く感じていた。
 2011シーズンは5位に、そしてコーチから昇格した樋口靖洋監督のもとで2012シーズンは4位に浮上する。そして優勝を現実目標におく2013シーズンがやってくる――。

(後編に続く)

【プロフィール】
ひょうどう・しんごう/1985年7月29日生まれ、長崎市長崎県出身。
国見高校では全日本ユース、インターハイ、高校選手権を制し、3大タイトルを獲得。国見歴代最高のキャプテンとも評される。早稲田大学に進学し、当時、東京都リーグ所属だったア式蹴球部に入部。在学中は、U-20日本代表として、2005年のワールドユースに背番号10とキャプテンとして出場。最終学年の2007年度にはインカレで優勝しMVPを受賞。
2008シーズンより横浜F・マリノス加入。2009シーズン副キャプテン、2010シーズンは栗原勇蔵とともにキャプテンを務める。2017シーズンに北海道コンサドーレ札幌に移籍。その後、ベガルタ仙台、SC相模原を経て2022年引退。2023年より早稲田大学ア式蹴球部監督に就任。
J1リーグ338試合出場36得点(F・マリノス在籍時、268試合出場32得点)

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第2回 引退覚悟で臨んだアトランタ五輪の10番。 遠藤彰弘が語る、マリノス初優勝と上野良治
第3回 F・マリノスで3度のリーグ優勝に貢献した遠藤彰弘。 「強いF・マリノスでいてくれるのは本当に嬉しいし、誇りでもある」
第4回 国見、早稲田、F・マリノスでもキャプテン。「考えるマルチロール」兵藤慎剛が意識していたコミュニケーション法
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Jリーグ創設以来、リーグ制覇5回、一度の降格もないトップクラブとして存在し続ける「伝統と革新」の理由を、選手、監督、コーチなどチームスタッフはもちろん、社長をはじめクラブスタッフまで30名を超える人物に徹底取材。「マリノスに関わる人たちの物語」を通じて描きだすノンフィクション。

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二宮寿朗

にのみや・としお●スポーツライター。1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「サッカー日本代表勝つ準備」(実業之日本社、北條聡氏との共著)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)など。現在、Number WEBにて「サムライブル―の原材料」(不定期)を好評連載中。

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