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爪切男の新作は美容と健康がテーマ。「音楽や映画のように掘っていく楽しさも美容にはあるんです」

いろいろ見てから4畳半に帰ってくる自分の方が強い

――美容や健康にハマることで、文章の書き方が変わったところはありますか?

プライベートでも作品でも、人の長所を見つけるのがうまいねと言われることが多くて。それってたぶん、自分への自信の無さの裏返しもあったんじゃないかと思うんです。人のことはうまく書けても、自分のことは素直に書けない。自分のことを書こうとするとどうしても照れちゃうんです。それで笑い話にして逃げるクセが強かったんですけど、この本では、自分の気持ちを割と素直に書けたと思います。

――これまでと違う書き方をすることで不安はなかったですか?

連載開始時はありました。そもそも、美容と健康がテーマのエッセイなんて、ファンの人に面白いと思ってもらえるんだろうかって。『死にたい夜にかぎって』というデビュー作を好きだって言ってくれるファンもいまだに多いので。ありがたい話なんですけどね。デビュー作の舞台になった中野の4畳半のボロアパートで悶々としながら書く作品も面白いかもしれないけど、美容と健康という新しい刺激を受けて書いた本作も面白いと思うし、今まで私の本を読んでいなかった人にも読んでもらいたいですね。もしこれから先、何もかも嫌になってまた4畳半の部屋に戻ることがあったとしても、それはそれでまた凄みのある文章を書ける強い作家になっているんじゃないかなと思うので、この本を書き終えた今は、不安はあまりないですね。

読者の皆さんの抱く爪切男のイメージに甘えていたんです。無頼派として扱われることをうまく利用していたというか。身近な人から「もっと素直な文章を読みたい」とか「規則正しい生活を心がけたほうがいいんじゃない?」と助言を受けても、「俺はこのままがいいんでほっといてください」と突っぱねてきたんです。変わる勇気もないから楽なほうにばかり逃げてましたね。今では人の意見に頷いてばかりです(笑) 。

――他にどんな場面で、どういうアドバイスを素直に聞くようになりましたか?

生活の全てですね。食生活もそうだし、趣味の面でもそう。今までは全然興味が湧かなかった演劇や舞踊鑑賞にも足を運ぶようになりました。「おまえはもっと本を読んだほうがいい」と、先輩作家たちから散々言われてきたんですけど、「本を読まずに書く文章のほうが味が合っていいんです」と強がっていた昔が嘘のように、今はひたすら本を読んでます。私、これからどんな作家になるんでしょう。初めて自分に期待しています(笑)。

シートマスクだけは欠かさない日々。そのせいか明らかに以前より肌ツヤのよい爪切男。
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爪切男『午前三時の化粧水』刊行特集一覧

【爪切男 刊行記念インタビュー前編(3月26日配信)】 「音楽や映画のように掘っていく楽しさも美容にはあるんです」

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