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ホストクラブと女風はどう違う? 似て非なる二つの世界 【対談】菅野久美子×槙島蒼司

幸せになって卒業してほしい

菅野 槙島さんのお客さんは、みんなそういうスタンスを理解して、あんまり思いつめた感じにはならないんですかね。

槙島 もちろん、そうじゃないお客様もいらっしゃいました。新人の頃からお付き合いのあったお客さまが、結婚するからって卒業されることになったんですね。その方は婚約者と並行して僕とも会っていて、結婚する話が出てるけど、あなたのことが好きだからどうしていいかわからない、という状況になってしまっていたんですが、「僕といても絶対に幸せにはならないよ」ってことをちゃんと伝えて、背中を押した。
決断をするっていうのは、リスクを伴う、結構しんどいことじゃないですか。それを引き受けた先にしか、幸せになるって結果はないんです。その方は離れていきましたけど、何も残らないより、決断して、願わくば幸せになって卒業してほしい。

菅野 槙島さんは、お客さんの長期的な人生を見据えた上で、本当の幸せを願っていらっしゃるんですね、すごく素敵なお話。

槙島 もちろん、悲しかったですけどね。でも、いつか絶対に卒業はしますから。僕だっていつまで続けられるかはわからないですし、そもそも短命な仕事ですから。だから、タイミングが来たなと思ったら、背中を押して送り出しますね。

菅野 それができるのは、本当にすごいなと思うんです。セラピストさんも色々だと思うのですが、私もそういうスタンスをお持ちの誠実なセラピストさんにお会いできると、やっぱりすごく感動してしまうんですね。ただ疑似恋愛といえど、お客さんと、性的行為を伴う濃密な時間を過ごしていたのは、確かですよね。お客さんの幸せを願いつつ、送り出す過程では、一時的に傷ついてしまうかもしれないと思ったりもします。

槙島 お金を払って会って、こういう関係になっているっていうコンセプトは忘れちゃいけないんです。仕事や育児の合間のご褒美とか、自分の中で区切った時間で使わなければ、何かしらがおろそかになっていく。そうすると、例えば結婚生活が順風満帆なはずなのに、旦那さんに対して嫌悪感を持っちゃう方も中にはいらっしゃるんですよね。

菅野 確かに、女風って、良くも悪くも心と体が、めちゃくちゃ揺さぶられると思うんですよ。これまで知らなかった世界が一気に拓けるので、こんな世界があったんだ!とワクワクする反面、それまで歩んできた日常が、突然くすんで見えるんですよね。

槙島 これは本当に怖いことで、今まであった幸せが崩れるんです。そこの責任って、僕たちが取れるものではないので、そういうところには踏み入らないようにはしますね。

菅野 セラピスト側から、一線を引くと。

槙島 そうですね。その一線を利用する人もいるんですけど、そこが最終的にお客様の幸せの方向に向くか向かないかっていうのをちゃんと考えてあげれば、たぶんもっと、楽しんでもらえるんじゃないですか。

菅野 そこが、私が女風、いいなって思うところなんですよ。女性が、ちゃんと自分でその先に向かっていけるというか。セラピスト側もそういう形に促そうとする人たちが、この業界には、わりといらっしゃる気がするんです。もちろん中には意図的に沼らせたりする人もいて大変な思いをしたって話も聞きますけど、私はセラピストさんとの相乗効果によって、人生に対していい変化を起こす女性をたくさん見てきました。それは槙島さんのように、「お客さんの本当の幸せ」を、セラピストさん側が願うかどうかというところが、とても大きい気がするんですよ。

対談の全容は、電子オリジナル書籍『私たちは癒されたい 「女風」に通う女たち』にて!

集英社 定価 1,100円(10%税込)
集英社 定価 1,100円(10%税込)

槙島蒼司さんがセラピストの道へ進んだ理由や、女風業界の今後、セラピストとしての展望など、余すところなく語っていただいた対談の続きは、電子オリジナル書籍『私たちは癒されたい 「女風」に通う女たち』でお読みいただけます。

※本作は電子書籍のみでお読みいただける電子オリジナル作品です。

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新刊紹介

菅野久美子

かんの・くみこ
ノンフィクション作家。1982年生まれ。
著書に『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』(角川新書)、『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(毎日新聞出版)、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)、『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)などがある。また社会問題や女性の性、生きづらさに関する記事を各種web媒体で多数執筆している。

X:@ujimushipro

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